「服を脱げば、仲良くなれる自信があったんです」という女性写真家・ヨシダナギ(29)。ときにほぼ全裸に近い民族衣装を身にまとい、アフリカ15か国、200を超える少数民族の写真を撮り続ける。
ヨシダが初めてアフリカに渡航したのは23歳。そこで被写体と距離を縮める難しさを痛感する。
「衝撃でした。撮影には気持ち程度の謝礼が必要となりましたが、それでは笑わないどころか眉間にシワを寄せ、写真を2、3枚撮ったら早くお金をくれという態度でした」
1年半後、股間を葉っぱで隠すだけのカメルーンのコマ族を訪ねた。洋服を着たヨシダを、4人の老婆が怪訝な表情で囲んだ。お金で交渉しても良い写真は撮れない。「同じ格好をさせて」と訴えた。
「わらの家に入り、上半身裸になり、パンツも脱ごうとしました。すると、老婆に『脱がなくていい』と手を叩かれた。でも、彼女らに認めてもらうには心意気を見せないといけないと思いました」
そのままパンツを降ろしコマ族の女性と同じ姿になると、しかめっ面だった老婆たちは溢れんばかりの笑顔で歓迎の舞を始めた。
「下ネタは万国共通。裸になると男性も遠慮なく私の胸も揉んできます。股間ネタも鉄板ですね(笑い)」
身も心も裸になってよい写真を撮ろうとする覚悟。それこそが、言葉が通じない地元の人の素顔を引き出せる彼女の武器なのだ。
ここで紹介する写真は、そうやってヨシダが撮影したエチオピアのスリ族のウェディングパーティ用の装飾。自生の植物を採ってきて、5分程度でリング状の装飾が完成する。
撮影■ヨシダナギ
※週刊ポスト2015年11月6日号