即戦力を求めるばかりに、今年も甲子園のスターを指名しなかった――。22日のプロ野球ドラフト会議で、巨人は立命館大学の桜井俊貴投手の単独指名に成功。公立高校出身で甲子園不出場ながら、大学でエースに上り詰め、今年は春5勝、秋はここまで6勝を上げ、春秋連覇の立役者となった大器である。巨人のドラフト戦略について、野球担当記者が語る。
「巨人の傾向としては、目先の勝利が至上命題であるためか、社会人や大学生の1位指名が目立ちます。特に、1993年の逆指名制度導入以降、それは顕著な傾向となっています」
たしかに、逆指名時代には来季から監督になる高橋由伸、上原浩治、阿部慎之助、高橋尚成などの社会人や大学生が名を連ね、クジ引きの対象となる松坂大輔などの甲子園を沸かせた高校生は指名すらせず、他球団、特にパ・リーグへ渡るケースが目立った。
「毎試合地上波でナイター中継が行なわれ、視聴率20%を超えていた時代の巨人にはスターがいました。生え抜きの4番である原辰徳、松井秀喜、投手でいえば江川卓、桑田真澄らがそうです。原や江川は大卒ですが、彼らは甲子園を沸かせた実績を持っており、高校時代からファンが知るスターだったのです。甲子園で彼らに興味を持ったファンは、物語の続きを、巨人戦で見ることができた。
近年は、地上波中継がほとんどなくなり、デーゲームも全国中継ではスポンサーがつかず、関東地区のローカル放送になってしまうなど、巨人の人気は伸び悩んでいる。本来なら今こそ、甲子園のヒーローを指名するべきなんです」(同前)
大学・社会人、高校の区分がなくなった2008年以降の8年で、巨人の高校生1位指名は大田泰示(2008年)、松本竜也(2011年)、岡本和真(2014年)の3人。以前と比べれば、増加しているが、甲子園で話題になった松井裕樹などの超高校級を巨人は指名していない。