隣り合う都道府県の住民同士が「ライバル意識」を抱くことは珍しくないが、いま最も熱を帯びているご当地バトルは「鹿児島vs宮崎」の南九州対決だ。
鹿児島市の繁華街・天文館の 摩料理店「黒福多」のカウンターには黒伊佐錦、白波、桜島といった地元・鹿児島産の芋焼酎が並ぶ。店主の牧豊年氏がいう。
「芋焼酎は鹿児島人の生活に根付いている。私は7歳から飲んでいました(笑い)。鹿児島の焼酎文化は大事にせんといかん」
サツマイモを原料とする芋焼酎は鹿児島が本家──そんな自負が見て取れる。だが、店には芋焼酎で全国シェア4割を超える霧島酒造の「黒霧島」は1本も置いていない。その理由を牧氏はこう明かす。
「霧島酒造の本社がある宮崎県都城市は、県境に近くて鹿児島の文化圏でしょ。率直にいってもよかですか? 宮崎は鹿児島の二番煎じが多いとですよ」
店主がそう語気を強める背景には、「芋焼酎ナンバーワン」の座を巡って起きた異変がある。本格焼酎の出荷量10年連続全国1位だった鹿児島県は前期(2014年7月~2015年6月)、トップの座を宮崎県に明け渡し、芋焼酎に限った出荷量でも初めて宮崎県に逆転を許した。
原動力となったのが「黒霧島」などを展開する霧島酒造の躍進だ。同社は2012年に売上高日本一の酒造メーカーとなり、3期連続でその座を守っている。霧島酒造の好調が宮崎県全体の出荷量を押し上げた格好だ。