(前編から続く)
胆管がんで亡くなった川島なお美(享年54)のがん治療法について論争が勃発した。発端は『文藝春秋』11月号での “がん放置療法”で知られる近藤誠医師による告白。川島が2年前に近藤医師の外来を訪れ、がん治療のセカンドオピニオンを受けていたという。そして、近藤医師は川島に外科手術の無意味さを説き、別の治療法を提案したと明かしたのだ。
近藤医師は、女性セブンの取材に対し、
「メスを入れた正常組織にがん細胞が集まり、暴れることが多いんです。また、初発病巣を手術で取り除くと、潜んでいた転移巣が急激に増殖するケースも多々ある。“このまま放っておいても1年で死ぬことはない。1年以内で死ぬとすれば、手術や抗がん剤治療を受けた場合です”と伝えました。抗がん剤は胆管がんには効かず、副作用しかありませんからね」
などとコメント。手術は無意味であると指摘している。川島は近藤医師の元を訪れた4か月後の昨年1月に摘出出樹を受けたが、その半年後に再発してしまった。近藤医師は、「わずか半年で再発したのは、手術が原因だったからと考えられます」と説明した。
そんな近藤医師の診察に真っ向から反論する人物がいる。東京オンコロジークリニック院長の大場大医師だ。元東大病院の胆管膵外科に所属した外科医で、転移性肝がんのスペシャリストである。
彼は『文藝春秋』の近藤医師の主張を読み、自らのブログでその診察は誤りだと断じ、早期手術の重要性を説いた。女性セブンの取材に対し、大場医師はこう答える。
「『文藝春秋』の記事を読む限りでの診断ですが、川島さんの肝内胆管がんは腫瘍の個数、大きさ、リンパ節への転移の有無などから診断すると、この時点でステージIIだったと考えられます」
大場医師は川島のがんの状態を米国の著名な外科医が500以上の症例からまとめた予後予測ツールに当てはめてみた。
すると、その時点(2013年9月)で手術していれば「3年生存率80%以上、5年生存率70%以上」という予測が得られたという。
「外科手術すればこれだけ高い生存率が望めたんです。逆に、手術によって1年以内に亡くなる可能性が高いというのであれば、近藤先生はその根拠となる客観的データを示すべきです。彼女は遅れて手術を受けても、術後1年半生きているわけですから、すでに彼の主張は矛盾している。“メスを入れた部分にがん細胞が集まり暴れ出す”という話も、なんら根拠が示されていない」(大場医師)
前述のように、川島が近藤医師の診察を受けてから手術するまでに要した時間は4か月。何よりもこの時間が悔やまれるという。