安倍晋三首相と韓国の朴槿恵大統領の間で初の首脳会談が11月2日に行なわれた。当然、慰安婦問題をめぐって両者一歩も引かぬ攻防戦が展開されるだろうと、両国の国民が固唾を呑んで見守っていた。
ところが、朴大統領の方から、水面下で慰安婦問題解決の“示談金”ダンピングに応じる構えを示してきたのだ。慰安婦への補償を行ない2007年に解散したアジア女性基金のフォローアップ事業として日本政府が元慰安婦に対する人道支援をするというもので日経新聞は1億円台、韓国の東亜日報は3億円以上と報道している。
安倍首相は日韓首脳会談後、BSフジのニュース番組に出演し、慰安婦問題についてこう語った。
「大切なことは、お互いに合意をすれば、その後はもうこの問題は再び提議しないということだ。ここで終わったと思ったけれども政権が代わるたびに提議をされているということがないようにしなければならない」
それができると考えているなら甘すぎる。たとえ朴大統領が前向きに見えても、慰安婦問題の金銭的解決が日韓外交上の大失敗だったことは歴史が証明している。朝日新聞元ソウル特派員でジャーナリストの前川惠司氏が語る。
「韓国側は朝日の記事で慰安婦報道が過熱し、外交問題に発展するとまず1993年に金泳三大統領が『日本に金銭的補償は要求しないから、慰安婦の名誉を回復してほしい』と持ちかけ、日本政府は河野官房長官談話を発表した。
さらに村山内閣はアジア女性基金で民間募金による償い金の仕組みをつくり、1人200万円を渡すことにした。しかし、元慰安婦を支援する韓国の反日団体・挺身隊問題対策協議会(挺対協)が日本の『法的責任』と『国家賠償』を主張すると、次の金大中大統領も女性基金に反対と言い出した。挺対協は元慰安婦たちに『そのカネを受け取ったら娼婦と同じになる』と受け取り拒否を働きかけ、当時236人いた韓国政府登録の元慰安婦のうち61人にしか渡せなかった。
慰安婦問題では韓国政府に当事者能力はなく、女性基金を復活させても挺対協は必ず『法的責任』『国家賠償』を蒸し返して受け入れないでしょう。ましてや日本が望む慰安婦像の撤去に応じるはずはありません」