スポートロジーとは、日本で作られた概念で、競技スポーツでの技術向上や障害の予防と治療を担うスポーツ医学とは異なる学問領域だ。hardware、software、brainwareを総動員し、スポーツが有する効能を統合的に学問することを目指している。
30年前にスポートロジーを発案した順天堂大学大学院医学研究科・スポートロジーセンターの河盛隆造センター長に話を聞いた。
「この研究推進を図るべく、2011年3月に第1回国際学会を開催し、成功裏に終了したのですが直後に東日本大震災が発生しました。その年の7月に“なでしこジャパン”が世界一になったとたん、すっかり落ち込んでいた日本人の心が再び元気を取り戻しましたね。スポーツは競技者だけでなく、応援している人たちにも好影響をもたらすことを実感できたのです。
こうしたスポーツへの期待、応援、感動が脳にどのように作用するのか。それは音楽やドラマに感動する場合と異なるのかなど、いまだ不明な点ばかりで、これからの研究課題です」
将来の健康阻害となるのがメタボリックシンドローム、ロコモティブシンドローム(運動器の障害により要介護になるリスクの高い状態)、フレイル(高齢者の筋力や活動量が低下している虚弱の状態)といわれている。この解消に共通するのが運動だ。加齢と運動不足により、筋肉が減ると、その分脂肪が増え「サルコペニア肥満」となり、転倒のリスクが高まるという。
最初に筋量が減少するのは大腿筋ではなく、呼吸を担っている横隔膜だといわれる。機能が衰えると、呼吸不全や誤嚥性(ごえんせい)肺炎などが起こりやすくなるのだ。予防には深呼吸が最適で、深呼吸せざるを得ない程度の速足で歩けば、横隔膜のサルコペニアが防止できることもわかってきた。