中国には「有銭能使鬼推磨(カネさえあれば幽霊にも臼を挽かせられる)」という諺がある。いかにもかの国らしい“金言”だが、習近平・国家主席の英国訪問では、そんな拝金主義が嘲笑された。
10月下旬、国賓として英国公式訪問を果たした習氏は、英国での原発や高速鉄道の建設など総額7兆4000億円にのぼるトップセールスを結んだ。滞在中はバッキンガム宮殿に宿泊し、エリザベス女王主催の公式晩餐会ではキャサリン妃が「チャイナレッド」のドレス姿で登場。そうした厚遇を中国メディアは「最上級の待遇」と報じた。
しかし、その「札束攻勢」は英王室の不興をかっていたようだ。英国文化に詳しい石井美樹子・神奈川大学名誉教授が解説する。
「晩餐会にはチャールズ皇太子が出席しなかった。皇太子はかねてからチベット弾圧などの人権問題を批判しており、抗議の意味での欠席でした。欠席を許した女王にも同じ思いがあったと見ることができます」
晩餐会で供された赤ワインにも、中国への抗議のメッセージが隠されていた。ワインはフランス・ボルドー産の「シャトー・オー・ブリオン 1989年」。1本約30万円の超高級ワインだが、あえて「1989年」を選んだことに痛烈な皮肉が読み取れる。