10月28日、粉飾決算疑惑で揺れる東芝は、半導体部門の主力工場の1つである大分工場の一部をソニーに売却する方向で調整していると発表した。
現在の予定では大分工場のスマートフォン向け画像センサー(CMOSセンサー)の生産設備がソニーに売却され、同センサーの開発担当者や関係する従業員およそ1100人がソニーの子会社に転籍するという。
大分工場の残りの事業は子会社の岩手東芝エレクトロニクス(岩手県北上市)と統合される。2016年4月に東芝は新しい子会社を設立し、ソニーに移らない大分工場の社員のほとんどが、この新会社に移る。大分工場の従業員は「待遇はどう変わるのか」という大きな不安を抱いている。
意外なことに「売り飛ばされる」ソニー組のほうが「厚遇になると思う」という声が多かった。本社に勤務する50代中堅幹部が解説する。
「今回、大分工場の残留組と統合される岩手東芝エレクトロニクスは東芝本社より給料が3割ほど低い。新子会社に移る社員は岩手東芝の待遇に合わせ、給料3割カットが待っているといわれる。現場では“なぜ、売り飛ばされたほうが厚遇になるのか”との声も出ているそうです」
単純な親会社比較では、社員の平均年収はソニーの891万円に対して東芝は759万円。大分工場からの転籍組がソニー子会社に入社した際に、役職者がそのまま同等の役職に就けるかといった詳細は明らかになっていない。ただ、興味深いのは転籍組には期待感があることだ。大分工場近くの飲食店店員がいう。
「2日前、知り合いが“息子がソニーに行くことになった”と話していました。“話を聞くと東芝に残るより給料がいいみたい”と浮かれてましたよ」
一方の「残留組」は将来に不安を感じているようだ。ソニーの2015年4~9月期の連結決算は最終損益が1159億円と5年ぶりの黒字。純利益額は日立製作所やパナソニックなどを抜いて電機6社でトップとまさに「V字回復」を果たした。