正月の風物詩・箱根駅伝の熾烈なトップ争いとは一味違った箱根路のドラマを演出するのが、出場できなかった大学からメンバーが選抜される「関東学生連合チーム」だ。今回、思わぬ大学からメンバーが選ばれた。
10月の予選会で出場を逃した大学のエース級選手からなる混成チーム「関東学生連合」のメンバーに、東京大学(理科II類)の1年生・近藤秀一が選ばれた。
関東学生連合は、予選会(20km)の個人成績上位者から選ばれる。近藤は予選会に出場した577人中、73位。各校から10~12人が出場するので、出場権を獲得した大学(10校)の部員の一部よりも速くゴールしている。タイムは連合チームのメンバー16人のなかで11番目で、10人の出走メンバーに入るかはまさに当落線上だが、近藤は高校時代から実績を残していたランナーだ。
箱根・芦ノ湖の南西に位置する静岡県函南町出身で、小学3年から陸上を始めた。進学校である県立韮山高校2年時に大きく記録を伸ばし、5000mで14分27秒をマーク。その年の高校県内ランクは5位とトップ水準だった。なぜそんな選手が、決して駅伝が強いとは言えない東大に進んだのか。東大駒場キャンパスのグラウンドでインタビューに答えた近藤はこう語る。
「(高2の時に)ベストタイムが出て、強豪大学から誘いもくるようになり、憧れだった箱根駅伝出場が現実味を帯びるようになりました。でも、強豪校に行くことには違和感がありました」
強豪校では有名監督の指導のもと栄養管理や講義出席の融通などで競技に専念できる環境がある。近藤は、逆の境遇を選択した。
「きっかけは東大陸上部から送られてきた部の紹介冊子でした。寮もない、専業の監督もいないけれど、選手が自主的にメニューをつくって練習している。“これだ!”と。強い集団で埋もれるより、自分で考えてチームを引っ張っていくほうが性に合っています。中学、高校がそうでしたから」
高3の受験では東大合格にわずか1点及ばなかった。浪人生活中は練習時間を確保するため予備校には通わず、朝5時半には起きて朝練、近所の図書館で夕方6時まで勉強し、再び夜に10km以上走った。その生活を続けた結果、浪人生でありながら個人参加した昨9月の県の記録会で5000mの自己ベストを3秒更新した。