永田町に奇妙な情報が流れている。安倍晋三首相が来年5月の伊勢志摩サミットを花道に勇退するという「サミット退陣論」だ。
にわかには信じがたい。首相は2か月前に自民党総裁選で無投票再選され、2018年まで3年間の総裁任期を得たばかり。安保法制の強行採決で落ち込んだ支持率も回復基調にある。そんな総理大臣になぜ、早期退陣論が浮上するのか。
穏やかではないのは、この情報が自民党の非主流派ではなく、政権中枢を発信源としていることだ。官邸に近い政界関係者の話である。
「総理の最側近の1人が、最近、『万が一、安倍総理の体調に異変があった場合は』という前提で政局の流れを検討している。ポイントは、総理に無理をさせて来年の参院選を戦うのではなく、サミット議長として外交成果をあげたところで体力的にも政治的にも余力を残して身を退き、次の政権への影響力を行使するというシナリオだ」
確かに、潰瘍性大腸炎という持病を抱える安倍首相の体調が万全とは考えにくい。本人は否定しているが、体調悪化情報がしばしば報じられた。
この秋以降、官邸や自民党執行部は負けるはずがない総裁選で対立候補の野田聖子氏を出馬させないように圧力をかけ、野党が要求する臨時国会も開こうとしない。その理由が、「周囲が首相の体力消耗を心配した」というのは党内では根強く囁かれている見方だ。