今期のドラマでは朝の枠では『あさが来た』(NHK)が、プライムタイムでは『下町ロケット』(TBS系)が好調だが、深夜帯でもにわかに注目を集めているドラマがある。石井裕也氏が監督を務め、オダギリジョーが主演している『おかしの家』(TBS・毎週水曜午後11時53分~)がそれだ。毎クール、すべてのドラマをチェックしているテレビ解説者の木村隆志さんは「今期No.1の傑作」と絶賛する。その魅力について木村さんが解説する。
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私自身、さまざまな媒体で今期の最注目作に挙げていましたが、ドラマのレビューサイトやTwitterなどでも絶賛の声が相次いでいます。当作は、両親を早くに亡くした主人公・太郎が、祖母の駄菓子屋『さくらや』を守ろうと奮闘するほか、幼なじみたちとの交流を描いた心温まる物語。その魅力は、ノスタルジーとスタイリッシュを併せ持つ映像美、何気ない会話の中に夢や過去などの大きなテーマが潜むストーリー、オダギリジョーさんや勝地涼さんらハマリ役ぞろいの俳優など、多くあります。
当作を見て「映画のようだな」という感想を持った人が多いようですが、それは正解。脚本・演出を手がける石井裕也さんは、『川の底からこんにちは』でブルーリボン賞監督賞を当時28歳で最年少受賞し、『舟を編む』で米アカデミー賞外国語映画部門の日本代表に選ばれたほか、日本アカデミー賞でも最優秀監督賞を受賞した若手屈指の映画監督です。その意味では、まさに「お金を払ってわざわざ見に行く」ような贅沢な品質の連ドラと言えるでしょう。ちなみに石井監督の妻は、若き名女優・満島ひかりさん。繊細な脚本・演出の石井さんと、繊細な演技の満島さんが引かれ合うのも、どこか納得してしまいます。