代表的な大衆魚のひとつであるサバは、日本市場に出回る多くが実はノルウェー産だという。そうなった理由はなぜか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。
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「秋サバは嫁に食わすな」と言われる(※編注:「秋なす」の誤植ではありません)。それほど秋~冬にとれるサバは脂がのって美味である……はずだが、最近では一年中、店頭でサバの姿を見ることができる。そして通年で出回るサバは、実はその多くがノルウェー産のタイセイヨウサバだという。
「現在、日本で消費されるサバの50%以上がノルウェー産のタイセイヨウサバです。スーパーで売っている塩サバや〆サバ、味噌煮や缶詰など、加工品の多くがノルウェー産で、なかには中国での加工を経由して入ってくるものもある。しかも、一般の消費者には、『真サバ』のイメージがいいようですが、水産加工の現場ではノルウェー産のほうが安定した品質だということは、水産関係者の間ではもはや常識化しています」(水産加工関係者)
だが「真サバ」と言えば、大分の関さば、神奈川県・三浦の松輪サバ、宮城県・石巻の金華さばなど名だたるブランドサバの魚種でもある。ノルウェー産の品質がそれほどまでに高いのか……。というと、そうではない。日本の「真サバ」の質が落ち、ノルウェー産のサバの質が上がったのだ。
もっとも「真サバ」の質が落ちたと行っても、魚の生育にまつわる環境に変化があったわけではない。ウナギやマグロと同じ、乱獲である。
型がよく、高値での取引が見込めるサイズ≒魚齢までの成長を待つことなく、0歳魚、1歳魚を水揚げしてしまう。当然、型がよくなる2歳以上の3歳魚、4歳魚も獲れなくなる。しかも獲らずに2~3年待てば、高値にまで育つものを小さく獲っては養食サバのエサにしたり、安値で中国やアフリカに輸出しているというのだから、言葉もない。
昨年からようやく「試験的に」北部太平洋海区の一部に、漁船ごとの漁獲量の上限を定める「個別割当(IQ)方式」が導入された。今年度は規模を拡大し、同区で操業する大中型巻き網漁船の全船が対象となる予定だ。