超人的な忙しさであろう堀江貴文氏であっても、毎日6時間は寝ると宣言するように、睡眠は人生にとって極めて重要なことである。しかしながら、眼が冴えて眠れなかったりすることもあるわけで、快適な睡眠には多くの人が悩んでいることだろう。
深夜に酔っ払いが騒いでいたり、隣の家のテレビの音が聞こえてくるなど「音」は睡眠を阻害するが、昨今はむしろ音楽を睡眠に取り入れる例も増えている。スマホのいわゆる「睡眠アプリ」が多数作られ、アプリのダウンロードランキング上位に入っているのだ。
そこで、快眠のためのiPhoneアプリ「快眠zzz」(ユニバーサル ミュージック)の音楽制作を担当したWaver Sound代表で、ミュージシャンの河合一正氏に「睡眠」と「眠れる音楽」の話を聞いた。河合氏は『世界遺産』(TBS系)のオープニングテーマその他、多くの音楽、映像、イベントのプロデューサー、ディレクターとして活動している。
――今回のアプリには、ショパンの『夜想曲第2番』などの癒しのクラシックのほか、しとしと雨やカエルの鳴き声といった自然音のほか、河合さんが独自に作った『星空のオルゴール』や『太古の記憶~森の自然音入り』などの曲が入っています。眠る時に音があるというのはむしろ邪魔に感じられるのですが、「眠るための音楽」というのは一体どういう発想で作るのですか?
河合:私は数多くのヒーリングミュージックを聴いてきました。聴きながら寝る時、夢の中に懐かしいイメージが出るなど、映像に包まれ、いつの間にか睡眠に入っています。そうした光景がヒントの1つとなっています。眠れる音楽というのは空気感とでも言える音でしょう。音量も押し付けるほど大きくてはいけないんですよ。「眠る瞬間」と「眠りたいという希望」の隙間を埋めるための睡眠を誘導するべき間を埋めるという事です。
眠りに入るための音というのは無音に近い隙間であると考えています。そのための快適な隙間は何か? 睡眠誘導の邪魔をしないか? を考えた上で、音が鳴っているか鳴っていないか? それによって体温変化感、呼吸変化他など、こういったことを脅かさないように誘導していくように考えながら音を積み重ねたり、抜いたりして導きを想像します。
――「隙間」っていうのは、音があり過ぎても困るし、なさ過ぎても困る。丁度良い感じの音が微妙に存在している、という考え方でいいですか?
河合:なかなか言葉にはしづらいのですが、まぁ、そういうものだとお考えください。今回カエルの声も収録していますが、これは「環境」ですよね。カエルは嫌と言う人もいるかもしれないです。その人には虫の方がいいかも。いや、添え物としての「音」こそ、眠くなる音楽なのではないでしょうか。あくまでも睡眠を誘導するために音を利用しているのです。
――具体的に、眠れる音の特徴ってどんなものでしょうか。
河合:再生する音量はすごく低くして、自分でも聞こえるか聞こえないかの音量レベルで再生しましょう。メロディがあってもいいし無いくらいでも良いと思います。あと心地良い不協音があるなど、心地良い裏切り音も必要。『ムーンヒーリング~クールダウンのBGM』という曲も収録しましたが、メロディではなく「揺らぎ」なんですよね。