そういって今場所の千秋楽の理事長挨拶も代行に頼むことを明かした。ならば病院で治療に専念すべきではないのか、無理を押して現場にこだわる理由は……。
──来場所以降は?
「わからないね。医者次第だよ。入院するようになるかもしれないね」
──来年の1月には理事選があり、理事長を続投するかが焦点になります。立候補する予定は。
「いや、まだわからない。皆で決めることだからね」
── 一門の中では?
「結論が出ていないというか、まだ話し合っていないんだよね」
しかし自身の中では続投か、勇退か、考えはあるのではないか──進退について尋ねると、北の湖氏はこんな言葉を口にした。
「う~ん……それは今俺の口からはいえないんだよ。応援してくださっている方がたくさんいるからね。もちろん俺の考えはある。しかし、ここで俺が何かいっちゃうと、変なことになってしまう。わかってもらえるだろ? 俺は腰が悪いだけなんだから……」
はっきりとは口にしなかったが、「俺は腰が悪いだけ」という言葉からは、少なくとも勇退の意思は感じられなかった。
「腰は(調子が)いい日もあるんだ。日によってまちまちだね」
──他に悪いところは。
「ないね。頭以外はね」
冗談を飛ばして北の湖氏は笑った。まさかこれが北の湖氏との最後になってしまうとは思いもしなかった。
※週刊ポスト2015年12月11日号