◆「~のほう」「~になります」
ファミレスやコンビニなど、店でよく耳にする「○○のほうでよろしかったでしょうか」「こちら△△になります」という言い回し。これは“ファミコン敬語”とも呼ばれ、正しい日本語とは決していえない。
「“~のほう”というのは、2つのものを比較した際に用いる言葉。比較対象がないのに、むやみに“ほう”をつけるのは感心しません。また、“~になります”は回りくどく、耳障りに感じるかたも。シンプルに“~です”と伝えたほうがいいでしょう」(前出・西出さん)
ほかにも「○○円からお預かりします」「~でよろしかったでしょうか」など気になる言葉は多いが、「一概に否定できない」というのは前出の吉田さん。
「たとえば閉店間際のファミレスで、店員が客に会計をお願いしたい時、“お会計よろしいでしょうか”より、“お会計のほうよろしいでしょうか”と声をかければ角が立ちにくい。相手を気遣っているという点では、婉曲的表現は決して間違いではありません」
◆嫁
「うちの嫁」「昨日嫁がさぁ~」といった男性の会話。しかし、夫が妻を「嫁」と呼ぶことについて、新聞紙面上でも大論争が巻き起こるなど、たびたび注目を集めている。
家族法制に詳しい、宮城教育大学教授の近藤佳代子さんがこう説明する。
「戦後、憲法改正にともない民法が改正され、家制度が廃止されました。しかし、不徹底な面もあり、家意識が払拭されたとは言い難い。家制度の下では、妻は婚姻により夫の家に入るとされていましたが、“嫁”といった呼び名は、その考えにつながるとして、抵抗を感じる人は多いと思います」
一方「夫」の呼び方も、「旦那」「主人」などさまざま。それでは、どう呼ぶのが正しいのか? 前出の吉田さんはこう提案する。
「互いに下の名前に“さん”づけするのはどうでしょう。個として尊重している雰囲気が出るのではないでしょうか」
繰り返すが言葉は生き物。○×で判断できないケースも多いが、相手を気遣う心があればきっとトラブルは起きないはず。
※女性セブン2015年12月17日号