約130人の犠牲者を出した11月13日の仏パリの同時テロは、「イスラム国」によって入念に準備、計画されていたことが明らかになりつつある。その直前に起きたロシア機爆破も含め、「イスラム国」による国際テロは新たなステージに入った。佐藤優氏が次なる危機を読み解く。
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イスラム教原理主義過激派は、アッラー(神)は、一つなので、それに対応して地上においてもたった一つのシャリーア(イスラム法)によって統治がなされ、全世界を単一のカリフ帝国(イスラム帝国)が支配すべきだと考える。
そして、この目的を達成するためには、暴力やテロに訴えることも躊躇しないというのが「イスラム国」(IS)の特徴だ。1月の事件(新聞社・シャルリー・エブド襲撃等)でも、11月13日の事件でも、フランスがテロとの戦いから手を引くことをISは要求している。
ただし、今回は、ISの手口が変化している。1月の事件でISは、フランスにいる「一匹狼」型の同志にテロ攻撃を呼びかけ、実行させた。
今回は、外国人戦闘員としてシリアかイラクのIS支配地域で本格的な戦闘を経験し、ヨーロッパに戻った後、ISからのテロ指令を待っていた秘密攻撃要員(インテリジェンスの業界用語でいう「スリーパー“眠っている人”」)やISからシリア難民に紛れてフランスに潜入した専門家が加わっているものと見られる。
10月末から、ISを攻撃する国家や武装集団に対する3つの出来事があった。10月31日に起きたシナイ半島でのロシア民間航空機の墜落、11月12日にISと敵対するイスラム教シーア派組織ヒズボラが拠点とするレバノンの首都ベイルートでの連続爆発事件(43人死亡)、翌13日にパリで起きた連続テロ事件だ。いずれも相互に関連していると見られる。