憲政史上3回目の衆参同日選挙のXデーは「来年7月10日」になる──。自民党内で衆院選と参院選の同日選挙論が急速に広がっている。
口火を切ったのは佐藤勉・国対委員長だ。11月28日の自民党議員のパーティで、「来年ダブル選挙があるかもしれない」とぶち上げると、谷垣禎一・幹事長が「いろいろな可能性はある」と追随し、伊達忠一・参院自民党幹事長は「参院選との相乗効果が見込める」と歓迎のコメントを出した。
政権与党の最高幹部たちがここまで解散日程に踏み込んだ発言をするのは異例といえる。本来、解散・総選挙は「総理大臣の専権事項」であり、党幹部は解散について質問されても、「総理が決めること」と言及しないものとされてきたからだ。
そのため、自民党内には、「執行部が解散風を煽るのは『当分自分の選挙はないから』と動きの鈍い衆院議員たちに危機感を与え、参院選に力をいれさせるためのブラフ(威嚇)」という見方がある。
しかし、単なるブラフではない。同日選シナリオの震源地が首相官邸だからだ。来年の参院選は安保法制やTPP(環太平洋経済連携協定)に対する批判で自民苦戦が予想されている。それを見越した官邸は10月の内閣改造直後から「衆参同日選」に持ち込んで有権者に「安倍政権か」「共産党を含む野党連合政権か」と政権選択を問いかけ、一気に選挙戦を有利に運ぶ逆転戦略を練っていた。
「現在の内閣支持率や野党の選挙準備不足の状況は、『死んだふり解散』と呼ばれた1986年の中曽根康弘内閣の同日選の時に非常に似ている。当時、自民党は衆院300議席、参院72議席(非改選を含めて143議席)という過去最高議席を獲得した。自民党の選挙部隊が行なった極秘シミュレーションでは、来年同日選を打てば衆参ともに圧勝できるという分析がなされ、官邸では具体的な同日選の日程を検討してきた」(官邸筋)