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『帝国の慰安婦』著者が在宅起訴 異論許さぬ韓国の言論空間

 本に事実を書いただけなのに、裁判所から差し止めの処分を下され、捜査当局から追及を受ける──韓国では今、そんな事態が起きている。

「元慰安婦の名誉を毀損した」という罪で、韓国・ソウルにある世宗大学の朴裕河(パク・ユハ)・教授が11月18日、ソウル東部地方検察庁に在宅起訴された。

 名誉毀損罪と見なされたのは2013年に韓国で発売された朴教授の著書『帝国の慰安婦』(邦訳版は2014年に発売、朝日新聞出版刊)の記述だ。

 同書については昨年6月、元慰安婦9人が「虚偽の事実を記載して名誉を毀損された」として出版差し止めの仮処分請求を起こし、ソウル東部地裁は今年2月、「34か所の文言を削除しない限り出版を差し止める」との決定を下していた。

 その後は裁判所が問題だと“認定”した部分の文字を伏せるなどして店頭に置かれていたが、ついに韓国検察が起訴に踏み切ったのだ。

 恐ろしいのは、朴教授が著書で間違ったことなど書いていないことだ。たとえば、今回問題とされている箇所に以下のような部分がある。

〈朝鮮人慰安婦の苦痛が日本人売春婦の苦痛と基本的に変わらない点をまず知る必要がある〉

 貧困などを理由に体を売らなければならなかった当時の女性の苦難に等しく寄り添うべきとする考え方で、至極まっとうに読めるが、それが「名誉を毀損」と判断される。

 また、〈少なくとも『強制連行』という国家暴力が朝鮮の慰安婦に関して行なわれたことはない〉という部分も問題だとされた。これも、朴教授が史料と丹念に向き合った結果、導き出されたものだ。産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が解説する。

「『帝国の慰安婦』は綿密に史料を研究し、多様な事実を掘り起こした学術書です。韓国では旧日本軍による強制連行はあったということが通説になってしまっていますが、彼女は“歪められた事実が子々孫々まで残るのは耐えられない”として研究を続けてきた。

 注目すべきは、彼女がそうした研究をした上で、“やはり日本政府には責任がある”と主張していることです。途中の記述がどうであれ、彼女の結論は、日本の植民地時代に慰安婦がいたのだから日本政府に責任がある、としています。決して日本を免責しようという考えではないのです」

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