「新型ノロウイルスを最も警戒すべきなのは、抵抗力が弱いお年寄りと子供です。高齢者施設や幼稚園、保育園で感染が拡大すると重症者が増える。最悪の場合、死亡するケースも懸念されます」
そう語るのは、川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長だ。岡部氏は国立感染症研究所の感染症情報センター長を務めた経験もある感染症研究のエキスパート。昨年、「新型ノロウイルス」を世界に先駆けて発見した人物でもある。
ノロウイルスの恐ろしさは、その感染力の強さだ。患者の便や吐瀉物1gには数億個のウイルスが含まれる。そのうち10~100個程度が体内に入っただけでも、発病する恐れがある。
しかも、ノロウイルスにはアルコール消毒はほとんど効果がない。予防のワクチンや有効な治療薬もない。乾燥にも強いので、空中を浮遊するホコリに付着して、口に入るだけでなく、目や鼻などの粘膜からも体内に侵入する。
さらに厄介なのは、今冬に流行するのが、「新型ノロウイルス」であることだ。
「ノロウイルスというのは30種類以上の遺伝子タイプがあります。今まで流行していたのは『G2.4』というタイプでしたが、今年は新型の『G2.17』タイプが主流になりそうです。
あるノロウイルスに感染すると体内には『抗体』ができるので、そのタイプには感染しにくくなる。ところが、新型には誰も抵抗力がないのでかかりやすい。
さらに、新型は病院の診断キットでの検査では検出されにくい。つまり、嘔吐や下痢の症状があって、“ノロウイルスではない”と診断されても、実は感染していたというケースが増えるということです。
すると、警戒感が薄まり、さらに感染は拡大します」(岡部氏)
日本では2006~2007年の冬に新型タイプが大流行したことがある。その年の患者数は例年の2倍以上に膨れあがり、各地で集団感染が起きるなど、大きな被害が出た。