ライフ

40男が信じる男らしさ 「今の時代にマッチせず」と社会学者

「思いこみをしない生き方を男性にすすめたい」と田中俊之氏

 鬱陶しい、乱暴だ、話が分からなくて長いなど、様々な理由で周囲から遠巻きにされ敬遠される中年男性が少なくない。男性学の視点から男の生き方の見直しをすすめる論客で、『<40男>はなぜ嫌われるか』(イースト・プレス)著者の田中俊之氏に、嫌われない40男になる方法を聞いた。

 * * *
――若い頃は同じことをしていても、目立たないので嫌われないのでしょうか?

田中俊之(以下、田中):目立たないというより、害がない。年を取ってくると、周囲に害を及ぼしてしまう。たとえば会社の中で一定程度、立場があるとするとパワハラやセクハラに繋がりやすいんです。

――どうしたら、嫌われない40男になれるのでしょうか?

田中:まず、身ぎれいにするのは誰でもできることですよね。鼻毛や耳毛を見苦しくないように整えることはすぐにできます。中年男性には、10年服を買っていない人がザラにいます。彼らは色あせ、擦り切れた服を無頓着に着ている。オシャレをしなさいというのではなく、体型に合う服を買って、見苦しくないように外見を整えてくださいということです。

――鏡を見れば見苦しさも実感できるはずですが、中年男性は鏡を見ないのでしょうか?

田中:まともに鏡を見ない人が多いと思いますよ。中年男性に目立つのですが、たまに前歯が欠けたままになっている人がいますよね。前歯は保険もきくはずなのに、長いことそのままにしている。人からどう見られているのかという客観視ができていないのでしょう。

――草食や絶食と揶揄されることもありますが、今どきの若い男性の細やかさは真似したほうがよさそうですね。

田中:僕の世代くらいまで、男らしさは「乱暴、不真面目、大雑把」でした。字が汚かったり、食事の仕方が雑だったりしても、男の子だからと許されてきたはずです。でも今の若い男の子は「やさしい、真面目、細かいことに気づける」で、時代も細やかさや優しさといった従来は女性に求めていた特性を性別問わず要求しています。残念ですけど、僕らが信じてきた男らしさは今の時代にマッチしていないんです。

 自分たちの時代の男らしさやコミュニケーションの仕方と、現在、求められている他人との共感をベースとしたコミュニケーションの仕方に大きなギャップがありますね。

――でも、どうしても今どきの若者をくさしてしまいがちです。

田中:同世代がついに「今の若者は」と言い出したときは、年を取ったのだと思い知らされたようでショックでした。そういうとき、自分たちの若い頃は違ったと主張する人がいますが、人は記憶を美化しがちな生き物なので、本当なのかよく考えたほうがいいですよ。

 たとえば、部活動の練習で水も飲ませてもらえずに校庭を10周走らされたが、それが糧になったという話をする人がいます。しかし、水も飲まずに校庭を走っていた当時は、絶対に無意味だと思っていたはずです。大人の論理に対して矛盾だとか、おかしいなと思っていた若者の頃の感情をみずみずしく思い出せるならば、若い人にも女性にも嫌われないでしょう。

――思いこみから自由になることが大事なんですね。

田中:それは中年だけでなく、若い人でも同じです。たとえば、大学生を対象にデートでの支払いについて調べたとき、約75%の女子が同額か自分の食べた分を支払うと答えているのに、男子は50%近くが女子より多めに支払うと答えている。女性が望んでいることに応えるより、自分が男としてやりたいことをやっているだけだとわかります。相手のことを見ていないとも言えますね。

――このすれ違いはどこから起きるのでしょうか?

田中:決めつけではなくあくまで傾向の問題として指摘しておきたいのですが、男の人というのは、自分が持っている枠組みを人とか現実に当てはめて理解する傾向があります。現実に起きていることを観察して理解するよりも、自分の固定観念に当てはめて理解して解釈しようとする人が多い。だからまずいことが色々と起きている。どうして、そんなに現実が見えないかな、とも思います。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
 チャリティー上映会に天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが出席された(2025年11月27日、撮影/JMPA)
《板垣李光人と同級生トークも》愛子さま、アニメ映画『ペリリュー』上映会に グレーのセットアップでメンズライクコーデで魅せた
NEWSポストセブン
リ・グァンホ容疑者
《拷問動画で主犯格逮捕》“闇バイト”をした韓国の大学生が拷問でショック死「電気ショックや殴打」「全身がアザだらけで真っ黒に」…リ・グァンホ容疑者の“壮絶犯罪手口”
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
「山健組組長がヒットマンに」「ケーキ片手に発砲」「ラーメン店店主銃撃」公判がまったく進まない“重大事件の現在”《山口組分裂抗争終結後に残された謎》
NEWSポストセブン
ガーリーなファッションに注目が集まっている秋篠宮妃の紀子さま(時事通信フォト)
《ただの女性アナファッションではない》紀子さま「アラ還でもハート柄」の“技あり”ガーリースーツの着こなし、若き日は“ナマズの婚約指輪”のオーダーしたオシャレ上級者
NEWSポストセブン
財務省の「隠された不祥事リスト」を入手(時事通信フォト)
《スクープ公開》財務省「隠された不祥事リスト」入手 過去1年の間にも警察から遺失物を詐取しようとした大阪税関職員、神戸税関の職員はアワビを“密漁”、500万円貸付け受け「利益供与」で処分
週刊ポスト
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン