イキる、とは調子に乗る、勢いづく、威張る、偉そうにするなどの意味。吉本新喜劇・座長の小籔千豊(こやぶ・かずとよ)は「イキる奴」が嫌いだという。小籔が、家族と命、そして「死に方」について語った。
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川島なお美さんが亡くなった後に、がんの治療方針を巡って医者同士が揉めていることが話題になっています。正直、医療の専門的なことは僕にはわかりません。ただ僕の母親が亡くなった時の経験でいうと、いろいろと思うところはあります。
新喜劇に入って1年ちょっとのクリスマスに母親が悪性リンパ腫で入院することになりました。「早ければ余命2週間。でも抗がん剤治療をくぐり抜けたら、わりと長生きする」と診断されました。
どうにか抗がん剤治療が功を奏したのに、その後の治療を母親が「金かかるだけやから、治療もええ、退院する!」と言いだして譲らない。仕方なく、せめて週1回通院する約束で退院することになったけど、母親は通院してなかった。「病院行ったら1本数万円する注射を打たなあかん。もったいなすぎる」と病院に行ったふりをしてたんです。
母親は健康だった時から「延命なんかいらん。死ぬ時は死ぬんや」と言っていてブレはなかった。だから僕は本人が望む通りにしたらええ、という気持ちもありました。
とはいえ、当時30歳になるかならないかの僕は貧乏で、治療代をビタ一文払えなかった。結局、何年かして母親は亡くなりましたが、あの時僕にお金があったら、目の前に札束を積んで「『注射も入院もなんぼでもせえ』と言えたのに」という後悔は今もあります。
結局は本人や家族がその時ベストだと思って選んだら、それでええと思うんです。大往生された方の家族でも少なからず後悔はあるはずです。それは家族の間だけで悩んだり思いをめぐらせればいい話。川島さんのケースでは医者ではない人たちまで好き勝手に「ああすればよかった」なんて言ってるようですが、「外野は黙っておけ」です。
母親のことは「家族を守るためには金が必要で、金を稼ぎ続けないといけない」という意志を固めるきっかけになりました。