今回の『勤行要典』制定にはもうひとつ懸念がある。創価学会の躍進時代を支えてきた高齢層の会員たちのなかには、いまも日蓮正宗の信徒組織だったころの記憶や思い入れが根強い。そうした世代の会員たちが脱日蓮正宗の動きに反発する可能性があるというのだ。
「高齢層の創価学会員にとって、日蓮正宗から離れていくことが、学会から離れるきっかけになってしまう恐れがあります。事実、高齢層の学会員のなかで近年、学会の方向性に疑問を持ち、“寝る”(学会の活動に積極的に参加しなくなること)人も出てきている。
組織としてこれは非常に危ない。なぜならば、公明党の選挙支援などで最も熱心に活動するのは、この層だからです」(前出・島田氏)
創価学会は高度成長期の1970年代初頭までの間に爆発的に会員を増やし、今の巨大組織の基盤を形成した。1960年に三代会長に就いた池田氏は、1970年までのわずか10年間に、公称75万世帯から約10倍の公称700万世帯超に信者数を激増させた。
「入会者たちの中心は、集団就職などで地方から都会に出てきて、地域に寄る辺のない若者たちでした。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』に、集団就職で出てきた女の子が出てくるでしょう。彼女のような女性たちが学会に入り連帯していったことで、最強と言われる学会婦人部が形成されたのです。
学会の中心となっているのは、その世代の高齢層です。一方で若い世代の創価学会員というのは、『親が学会員だったからそのまま入会した』という人たちが多く、そこまで創価学会の活動に対する情熱がない。だからこそ、創価学会を支えてきた高齢層が、創価学会から離れつつあるという状況は深刻です。
来年は参議院選挙もあるわけですが、公明党はこの状況でどこまでがんばれるのか、かなり不安なところがあるのではないかと私は見ています」(前出・島田氏)
※週刊ポスト2015年12月18日号