コワモテのルックスで「Vシネマの帝王」とも呼ばれる個性派俳優・竹内力(51才)。演歌に初挑戦し、『桜のように』を9月にリリースした。自ら作詞を手掛けており、他界した親友への思いを込めたという。また、曲が誕生した直後、最愛の父を失っていた。制作のカゲにあった知られざる秘話を竹内が独白――。
* * *
この前、NHKの歌番組に初めて出たんだけど、『桜のように』を歌うと、やっぱりアンドレ(俳優・安藤麗二さん・享年45)を思い出す。目の前に出て来るよね、どうしても。それで声が振るえた。嬉しくて、泣きそうになっていた。
幽霊とかじゃないんだよね。俺の中の幻影というか。彼にいてほしいという気持ちが詞に入ってるから、歌っていると目の前に出てくるんだろうね、あいつが。
親友のアンドレが亡くなったのは約5年前のことだった。肺がんだった。それから年齢的にも、死というものを考えるようになったんです。
今年の正月に、初めて高校の同窓会に出たんですよ。そういう場って、何組の誰々が死んだという話になるんだよね。結構、死んでるんだよ、俺らの年になると。どんどん死が近くなっているなと思って。
誰々が亡くなったと言って、10分くらいはその話をしているんだけど、30分もすると死んだ人の話よりも、あの頃はこうだったって思い出話になっちゃう。人ってこういうものなのか、クールだなというか、淋しいなという気持ちもあった。2次会でカラオケに行ったんだけど、みんな普段歌っているような曲を歌うんだよ。それにもちょっと違和感があって。
卒業式なら『贈る言葉』、結婚式なら『乾杯』とか、何となく定番曲があるでしょ。でも葬式とかで人を悼む曲ってそんなにないじゃないですか。あってもいいと思ったんだよ。
そんな思いもあって、アンドレに捧げた詞を書いていたんです。機会があって、山本譲二さんにその詞を見せて、「演歌をやりたいんです」と言ったんですよ。俺は年代的にも演歌で育ってきて、いつか歌いたいという気持ちがあったんです。
すると山本さんが、「やろう! 俺はプロデューサーをやろうかな。曲は俺の親友の吉(幾三)に書いてもらおう」って、とんとん拍子に進んだんですよ。吉さんも快諾してくれて。昨年末に、寿司屋で決まりました(笑い)。