イスラム国によるテロの標的となったフランスをはじめとする欧米各国でいま、極右と呼ばれる政党・指導者が着実に支持を広げている。彼らがさらに勢力を伸ばし、政権を担うに至った時、世界はどうなるのか。
12月6日、フランスで行なわれた地域圏議会選挙の第1回投票で、極右政党・国民戦線(FN)が得票率トップの28%を獲得。サルコジ前大統領率いる右派連合(同26%)、オランド大統領率いる政権与党・社会党(23%)を上回った。
極右の伸張はフランスだけではない。中東から押し寄せる難民の玄関口となっているギリシャで9月に行なわれた総選挙では、移民排斥を掲げる極右政党「黄金の夜明け」が得票率を伸ばし、議会第3党に躍進。難民受け入れに寛容なドイツでさえ、「ボートは満員だ(移民受け入れの余地はない)」をスローガンにしたドイツ国家民主党が昨年、欧州議会選挙で初めて議席を獲得した。東京外国語大学大学院総合国際学研究院の渡邊啓貴・教授はこう指摘する。
「デンマークでは国民党、ノルウェーでは進歩党、フィンランドでも真正フィン人党など、排外主義を掲げるポピュリズム勢力が議席を少しずつ伸ばしています」
1日平均6000人の難民が流れ込むオーストリアの首都ウィーンでは、10月に行なわれた市議選で反移民政策を掲げるオーストリア自由党が過去最高の得票率32%を獲得している。
そうした“ドミノ”の背景に「悪循環」があると指摘するのは外交ジャーナリストの手嶋龍一氏である。
「いわゆる低所得で3K的な職種を強いられるアルジェリア系や中東からの移民の不満はときに暴動事件に発展する。治安が悪化すると、移民の影響で仕事を奪われたと感じている低所得の白人が、『移民のせいでわが国の社会が壊れる』と主張する政党に投票し、それに対して移民はまた不満を募らせる。そうして社会の振り子が右寄りになっていく心配があるのです」