大腸内視鏡検査を実施すると、約3割の確率でポリープが見つかるといわれる。日本では、5ミリ以下のポリープはがん化しないので切除しないことが多い。しかし、アメリカでは1993年に大腸ポリープをすべて切除した場合、大腸がん発症率が76~90%抑制されると報告された。
その後、大腸ポリープは、がん化するしないに拘わらず、すべて取れば大腸がんリスクが激減するとのガイドラインが示された。これを受けてアメリカでは、大腸内視鏡検査は検査(観察)と治療(ポリープ切除)がセットで行なわれるようになっている。
昭和伊南総合病院(長野県駒ヶ根市)消化器病センターの堀内朗センター長に聞いた。
「ポリープを取れば、大腸がん死が減るため、苦痛を減らした検査と治療ができるように2004年から、鎮静剤のプロポフォールを使用しています。鎮静剤を使うと車の運転ができないといわれていましたが、臨床研究の結果、プロポフォールは投与後1時間経過すれば、十分に運転できるということがわかりました」
日本での大腸ポリープの切除は、スネアという金属の輪をポリープの根元にひっかけて高周波電流を流し、焼き切るという方法が一般的に行なわれている。ところが、熱をかけると治療後3日~1週間後に出血したり、腸の調子が悪くなることがある。これは熱によって、粘膜下層や血管がやけどすることが原因だ。
2008年、アメリカで行なわれた消化器病学会で、熱をかけずに安全にポリープを切除するコールドスネアに関する研究発表があった。これに参加した堀内センター長が帰国後、臨床研究を開始。出血の可能性が高いワルファリン(抗凝固剤)服用患者に対して、コールドスネアと高周波電流治療を実施し、比較したところ、高周波治療は出血の結果が出たので治療を断念せざるを得なかった。