いま、コアな箱根駅伝ファンの間では、「週刊ポスト読んだ?」が挨拶代わりになっている。どこよりもディープな情報を収集するウェブメディア「駅伝ニュース」の主宰者・西本武司氏(通称・公園橋博士)による本連載の評判が広がっているのだ。何年も箱根ランナーを追いかけ続けてきた「マニアの中のマニア」が注目するのはどの選手なのか?(文中敬称略)
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中央学院大の潰滝大記(つえたき・ひろのり。4年)という選手をご存じだろうか。
今度の箱根駅伝で本命と目されるのは青学大、それを東洋大や駒澤大といった対抗馬が追う。その優勝争いに、フラッシュイエローのド派手なランパンが特徴の中央学院大が絡むことは難しいだろう。それでも、この1年、いやここ何年間も箱根ランナーの走りを見続けてきた私としては、今度の箱根での潰滝の走りを、一人でも多くの人に見てもらいたいと思っている。
学生長距離選手に「今年、一番すごいと思った選手は?」とアンケートを取れば、おそらくトップに名前が挙がるのが、この潰滝であろう。
5月にあった関東インカレ2部の1万mでは、前回の箱根4区で区間2位の工藤有生(2年)、7区2位の西山雄介(3年)、9区3位の其田健也(4年)ら駒澤大の主力を抑え、2位に20秒差をつけての圧勝。
その翌々日の5000mでは、前回の箱根で青学大の“花の2区”を走った一色恭志(3年)、7区区間賞の小椋裕介(4年)らを抑えて2冠を達成した。6月の全日本大学駅伝関東地区予選では、日本大のダニエル・キトニー(4年)に次ぐ日本人最高位で、中央学院大の1位通過に貢献している。
私たち「駅伝ニュース」が注目するのは、彼の走りだけでなく、尋常ではない過密スケジュールだ。
今春は4月25日、兵庫リレーカーニバルの1万mで学生1位を獲った後、さらに翌日の3000m障害で3位入賞。前述の通り、5月14日、16日の関東インカレで2冠(そもそも、この2種目の両方にエントリーする選手はほとんどいない)、6月20日の全日本大学駅伝予選会で日本人トップ。普通なら、これだけ走れば故障してしまう。だが「鉄人」潰滝は違う。
全日本予選翌週の6月26日は日本選手権(新潟)3000m障害で実業団選手を抑え、スタートから独走して優勝。2日後の5000mは明大のエース・横手健(4年)に次ぐ学生2位に入っている。
さらに7月9日には、韓国・光州へ飛び、“学生のオリンピック”と位置づけられるユニバーシアードの1万mで9位。翌日は5000m予選を突破。さらにその2日後の7月12日夜には同決勝で6位入賞を果たした。
驚くべきは、同日朝のハーフマラソンにも潰滝が出走していたことだ。これはハーフマラソン「男子団体」への日本チームとしての出場を有効にするための出走だったので5km過ぎで棄権したが、そもそも夜に個人種目の決勝を控えている選手は出走しないのが普通だ。
そして、韓国で大車輪の活躍を見せた翌週の7月19日には北欧・フィンランドで行なわれたサボ・ゲームスで3000m障害に出場している。8月の世界陸上(北京)にも国際陸連から招待状が届いていたが、日本陸連が選考基準に届いていないことを理由に出場させなかった。出場していれば、世界を舞台に快走を見せてくれただろう。