収録作品の中で特に好きな作品は?と尋ねると、「山姥」と即答した。描かれるのは、年齢差を超えて惹かれ、心通わせる男女関係だ。表題作「わかれ」のモチーフでもある。
「私はセックスを伴わない恋愛もあると思うんです。だから、それを書いた。セックスを伴ったら、ゴタゴタギトギトして嫌な面も生じるけれど、セックスを伴わない恋愛って、ヤキモチがないから、なかなか良いんです。ただ、そういう関係って、長くは続きませんね。小説でも、どこかで消してやろうと思って(笑い)」
男と女の「わかれ」の先には、いずれ誰にも必ず訪れる死がある。全作に通底するそれには、93年生きて、多くの人を見送ってきた瀬戸内さんの実感が籠もっている。
「結局、生まれたら死ぬんだから、死ぬために生まれてきて、別れるために会うんですね。だからやっぱり会うことは死ぬことだから、この頃、人とさようならって言うときに、もしかしたらこれで会えないのかなと思うの。あなたと会っても、さようならって帰ったら、私はあなたの後ろ姿をずうっと見てるんですよ」
【注】本インタビューは、電話で行いました。
※女性セブン2016年1月1日号