地方に本社がある大手自動車メーカーの50代社員がため息交じりにボヤく。
「管理職になった同期の国内出張は新幹線のグリーン車だけど、出世競争で大きく水をあけられた私は50歳にもなって普通車の狭い座席。こうもわかりやすく差を付けられるとね……。
飲み屋で会えば互いに呼び捨てで昔話に花が咲きますが、“本当は見下されているんじゃないか”と卑屈な気持ちにもなります。給料も大きく違うけど、“払いは割り勘で”というのがせめてもの私のプライドです」
会社の「同期」はサラリーマンとして苦楽をともにする仲間であり、鎬を削るライバルでもあるが、当然、キャリアを何十年も重ねれば給与・待遇は大きく違ってくる。
しかもその「同期格差」が近年、広がっている。かつての日本企業は「終身雇用」と「年功序列」が守られていたが、時代は変わった。今や多くの企業が「実力主義」を取り入れた。これまで同期入社の賃金差が比較的小さく、年功序列型の色合いが濃かった電機メーカーも海外での競争のなかで賃金制度が変わってきている。
例えばパナソニックは近年、国内約7万人の社員を対象とする新賃金処遇制度を導入した。新制度は個人の仕事内容や組織への貢献度などに応じ、「P1」「P2」といった等級を決め、これに基づいて給与が決まる。
いち早く成果主義を導入した富士通に加え、日立製作所やソニーでも年次ではなく、「仕事力」で給料が決まる制度が取り入れられている。賃金ジャーナリストの溝上憲文氏が解説する。
「電機関連の大企業が年功型から役割給に変えたのは、勤務年数による固定給の上昇を抑制するためです。業績に貢献した人に多く払うことにより、社員のモチベーションを高める狙いもあります。つまり、同期入社でも給料は全然違ってくる」