「国家神道」の時代には、全国の神社は明確に序列化されていた。戦後、制度は廃止され、現在に至る。神道学者で歴史家の高森明勅氏が「神社の格」について解説する。
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神社に序列なんてない。それぞれの神社に祀られる神様の前で恭しく頭をさげ手をうつ時の気持ちはそうだろう。一方、各神社の歴史的・社会的な位置付けを大きく眺めると、おのずと序列のようなものが浮かび上がってくる。
その際、1つの目安が“天皇・皇室とのつながり”。天皇は歴史上、国内の統合だけでなく宗教・文化の面でも最高権威だったし、現在も神道の至高の「祭り主」であることに変わりはない。
その視点からまず取り上げるべきは伊勢の神宮。何しろ全国の神社を包括する神社本庁が「本宗(ほんそう、総本家)」と仰ぐ神社だ。序列を超越する。日本神話の最高神で皇室の祖先神、天照大神を祀り、その神霊が宿るご神体は皇位のしるしの「三種の神器」の中でも特に尊い八咫鏡(やたのかがみ)のご本体だ。古代以来、厚く崇敬されてきた。
今も昭和天皇の4女、池田厚子様が祭主(さいしゅ、神職の長)を務め、毎年3回、大切な祭りに天皇のお使いの勅使が差遣される。20年に1度神殿などを建て替える式年遷宮が7世紀から戦国時代の中断を乗り越えて続けられ、62回目にあたる平成25年には1400万人以上もつめかけた。神社の頂点だ。
他にも勅使を迎える神社が16社ある。勅使は天皇からの供え物を献じ、ご祭文を読み上げる。皇居ではその時間帯、天皇が「お慎み」になる。これらの神社を勅祭社と呼ぶ。特別の待遇をうけるので一般の神社より重い地位と見られる。それぞれ古い由緒や皇室との縁が深い神社ばかりだ。
16社中、宇佐神宮と香椎宮は10年ごと、鹿島神宮、香取神宮は6年ごと、それら以外は毎年、勅使が差遣され、戦没者を祀る靖国神社だけは春秋2度の大祭に勅使を迎える。
勅祭社の中の熱田神宮は三種の神器の1つ草薙剣のご本体を祀る。皇居の御所にあるご分身は源平合戦で1度壇ノ浦に沈んだが、後に伊勢神宮から献じられた宝剣が伝わった。熱田神宮のご神体こそ神話に由来する神器そのもの。