国際情報

中台首脳会談で平和条約名目の密約成立か 日本への影響は?

 日本による統治時代を経て戦後、台湾と日本の人々は政治のみならず精神的にも良好な関係を築いてきた。しかし、今まさにその関係に中国がヒビを入れようとしている。拓殖大学海外事情研究所教授の澁谷司氏が解説する。

 * * *
 目下、中国の習近平政権によって日本と台湾関係が大きく揺らぎかねない局面に来ている。

 去る9月22日、台湾の李登輝元総統はラジオ番組に出演し、今後の台湾政治を概観する中で、習近平国家主席、馬英九総統の中台両首脳が強引に中台統一の動きに出る可能性を示唆し、懸念を表明した。それを裏付けるかのように11月、中台首脳会談が行われた。

 2015年11月7日、シンガポールにて66年ぶりに行われた中台首脳会談は、習近平と馬英九が会見場でおよそ80秒間にわたる握手を交わすことから始まった。その後2人はシャングリラ・ホテルの会談場に姿を消す。途中、会談場のドアは閉ざされ、それからの約50分間は非公開の「密談」となった。

 その後、中国国務院台湾事務弁公室主任の張志軍と馬英九が別々に会見場に現われ、中国側・台湾側それぞれの立場から趣旨説明と質疑応答を行った。

 この会談で両首脳同席の共同会見がなかったことはきわめて不自然である。歴史的意義と友好ムードを世界にアピールする目的があるのならば、形だけでも共同会見を行うべきだっただろう。

 もしかすると、両者の真の目的は50分間の「密談」ですでに達せられたと考えられるのではないか。

◆「中台平和条約」という悪夢

 密談の中身として、一番に考えられるのは「平和条約」という名の「密約」が交わされたのではないかということだ。この密約にのっとり中台双方に「平和的統一」を宣言されると、今後、米軍はいかなる行動もとれなくなる。

 台湾が中国の「不沈空母」と化すことになり、西太平洋方面にかけての中国艦船の航行が完全に自由になる。台湾有事が存在しない状況で日本はおろか在沖縄の米軍も手を出せず無力化する。米軍はグアムまで撤退するか、尖閣諸島あたりで中国(及び台湾)軍と対峙することになるだろう。

 また、中台統一がなされることで、2015年9月の抗日戦勝利70周年記念パレードや、「南京大虐殺」といった一連の反日プロパガンダの説得力が増してしまう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《10年抗争がなぜ突然?》六代目山口組が神戸山口組との抗争終結を宣言 前兆として駆け巡った噂と直後に投稿された怪文書
NEWSポストセブン
川崎
“トリプルボギー不倫”川崎春花が復帰で「頑張れ!」と声援も そのウラで下部ツアー挑戦中の「妻」に異変
NEWSポストセブン
最後まで復活を信じていた
《海外メディアでも物議》八代亜紀さん“プライベート写真”付きCD発売がファンの多いブラジルで報道…レコード会社社長は「もう取材は受けられない」
NEWSポストセブン
ショーンK氏が千葉県君津市で講演会を開くという(かずさFM公式サイトより)
《“ショーンK復活”が話題に》リニューアルされたHP上のコンサル実績が300社→720社に倍増…本人が答えた真相「色んなことをやってます」
NEWSポストセブン
依然として将来が不明瞭なままである愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
愛子さま、結婚に立ちはだかる「夫婦別姓反対」の壁 将来の夫が別姓を名乗れないなら結婚はままならない 世論から目を背けて答えを出さない政府への憂悶
女性セブン
28歳で夜の世界に飛び込んだ西山さん
【インタビュー】世界でバズった六本木のコール芸「西山ダディダディ」誕生秘話、“夢がない”脱サラ社員が「軽い気持ち」で始めたバーダンスが人生一変
NEWSポストセブン
通算勝利数の歴代トップ3(左から小山さん、金田さん、米田さん)
追悼・小山正明さん 金田正一さん、米田哲也さんとの「3人合わせて『1070勝』鼎談」で「投げて強い肩を作れ」と説き、「時代が変わっても野球は変わらない」と強調
NEWSポストセブン
行列に並ぶことを一時ストップさせた公式ショップ(読者提供)
《大阪・関西万博「開幕日」のトラブル》「ハイジはそんなこと望んでいない!」大人気「スイス館」の前で起きた“行列崩壊”の一部始終
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《“イケメン俳優が集まるバー”目撃談》田中圭と永野芽郁が酒席で見せた“2人の信頼関係”「酔った2人がじゃれ合いながらバーの玄関を開けて」
NEWSポストセブン
六代目体制は20年を迎え、七代目への関心も高まる。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
山口組がナンバー2の「若頭」を電撃交代で「七代目体制」に波乱 司忍組長から続く「弘道会出身者が枢要ポスト占める状況」への不満にどう対応するか
NEWSポストセブン
日本館で来場者を迎えるイベントに出席した藤原紀香(時事通信フォト)
《雅子さまを迎えたコンサバなパンツ姿》藤原紀香の万博ファッションは「正統派で完璧すぎる」「あっぱれ。そのまま突き抜けて」とファッションディレクター解説
NEWSポストセブン
ライブ配信中に、東京都・高田馬場の路上で刺され亡くなった佐藤愛里さん(22)。事件前後に流れ続けた映像は、犯行の生々しい一幕をとらえていた(友人提供)
《22歳女性ライバー最上あいさん刺殺》「葬式もお別れ会もなく…」友人が語る“事件後の悲劇”「イベントさえなければ、まだ生きていたのかな」
NEWSポストセブン