ヒット商品番付、流行語大賞、今年の漢字……と1年を振り返る話題が一通り出揃った年の瀬。当サイトでは毎年、日経BPヒット総合研究所上席研究員の品田英雄氏に、さまざまなトレンドから世相を映す“共通項”を導き出してもらってきた。
2015年は「エンタメでも商品でも爆発的なヒットが少なく、小粒ばかりだった」との声も聞こえてくるが、実はその傾向こそが今年の世相を表していたのかもしれない。品田氏の話を総合して浮かび上がってきたのは、「成熟社会」「価値観の多様化」という2つのキーワードだ。
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手前味噌で恐縮ですが、『日経エンタテインメント』(2016年1月号)で発表した今年のヒット番付を見ると、上位にマツコ・デラックスさんや嵐、AKB48グループ、有村架純さんなど、人名が数多くランクインしました。
これまで興行収入が100億円を突破した映画など、作品が売れるのがヒット番付の価値でしたが、今はまるで人気タレントランキングになっている。それだけ「個」が際立ってきた証拠なのかもしれません。
特にマツコさんはトークの面白さはもちろん、ストレートな物言いでセクハラまがいの発言も許されてしまう人気者に。ゲイということもあり、昔だったらメインストリームにいない人が、いまやトヨタ自動車や日本郵便など名だたる企業がCMで起用するほど認知されました。LGBT(性的少数者)への理解も進む中、まさに多様性の時代の象徴です。
CMでいえば、上戸彩さんや杏さんといった既婚女性タレントが多く起用されているのも特徴的です。タレントの結婚ラッシュに沸いた今年。本来なら結婚は人気を下げるきっかけにもなりましたが、最近は「憧れの女性は結婚していようがいまいがステキ」と、既婚者の安定感が好感度を上げる要因になってきたようです。
広瀬すずさんや水原希子さんのようなショートヘアでカジュアルな“ハンサム女子”が人気なのは、女性の自立が叫ばれる時代にあって、「女性らしさ」をあまり強調しない価値観が出てきたことの表れかもしれません。
また、菜々緒さんがドラマ『サイレーン刑事』で殺人犯役を熱演して評価を上げたのも、従来の枠にはまらない価値観の多様化といえます。明るいヒーローやヒロインばかりにスポットが当たる時代は終わり、見る側も成熟したのです。
動画もインターネットで見る人が増えたので、面白いものは規模の大小を問わず、すぐにネットで伝わります。
プロが作ったテレビや映画といった作品と、アマチュアがユーチューブで発表する作品、さらには地方発の企業CMなどの境目がなくなっている気がします。コンテンツの大きさや知名度が必ずしもヒットに結びつくとは限りません。