2016年の「食」はなにが来るのか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が予測する。
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「食」にまつわるトレンドはめまぐるしく移り変わってきた。何かがブームになってはその多くは情報として消費され、次なる機会を待って長き眠りについてきた。だがいまや国内の「食」で完全に目新しいものなどない。昨年、大ブレイクしたポップコーンも、1986年以来実に28年ぶりのブームで、いまだに人気は続いている。もはや日本の食シーンにおいては、消費され尽くされないだけの底力のあるものしか生き残れない。その傾向は2016年、ますます強くなる。
まず、すでに種まきがされていて2016年、さらなる伸びが期待できそうなジャンルから。先日2015年の総括でも書いたが、ハンバーガーだ。代官山のHENRY’S BURGERやユーゴ・デノワイエといった新機軸のハンバーガーを提供する店がハンバーガーブームを牽引する。加えてアメリカからの来襲組である、シェイク・シャック、カールス・ジュニアの盛況も間違いないだろう。
もっとも、2016年のハンバーガーブームの真の本命は、国内勢だ。人形町BROZER’S、北千住サニーダイナー、五反田フランクリン・アベニューなど、東京で評価を確立した名店はもちろん、最近では古都・京都や鎌倉にも専門店が続々登場している。その他の地域でも地場に根づいたバーやカフェなどで、うなるほどうまい本格ハンバーガーに出会えるようになった。
ハンバーガーの代名詞だった巨大チェーンが店舗展開を縮小するなか、間隙を縫うかのように、専門店、新規外資系、その他のカフェ業態などが独自のハンバーガーを打ち出し始めた。誰もがイメージできるたったひとつの味から脱却し、多様なハンバーガー文化が上書きされる2016年となりそうだ。
同様に、長く土壌が耕されてきたジャンルに中南米料理がある。こちらもバブル景気終わりごろに「テックスメックス」料理として、一瞬流行りかけたものの大きなトレンドにはなっていなかった。ところがポップコーン同様、中南米料理にも20数年ぶりのうねりが来ている。1980年代後半に一度、日本進出→数年で撤退していたメキシカンファストフード店、タコベルが2015年に東京に再進出。ブラジルのシュラスコ料理を提供するレストランやペルー料理店も人気を博している。
「国民の人数より、牛の頭数のほうが多い」と言われ、その味も高評価を得ているアルゼンチン産牛肉の輸入解禁も噂されるなど、さまざまな角度から中南米料理が盛り上がりを見せている。