今や2人に1人が罹患する時代。“がんとの闘い”は決して他人事ではなく、明日はわが身に起こっても不思議ではない。とりわけ、乳房や子宮という女性特有の部位の病について、知っておかなければいけないことはたくさんある。
がん治療の副作用で女性が最も悩むのは、「髪の毛が抜ける」ことだ。秋に乳がんだと公表した北斗晶(48才)も手術前にロングヘアをばっさり切ってボブカットにし、抗がん剤の副作用で髪が抜け始めたので、思い切って剃って坊主姿になったことをブログで報告した。
脱毛の副作用について、国立がん研究センター中央病院・アピアランス支援センター長の野澤桂子さんが説明する。
「乳がんや子宮がんの治療で投与する抗がん剤には、脱毛の副作用があることが多いです。抗がん剤治療を始めてから平均19日くらいで髪の毛が抜け始め、その後、約1週間でほぼすべて抜けます。髪の毛は10万本以上生えているので、1日の脱毛量は膨大です。特にお風呂に入って髪を洗ったとき、朝起きたときに抜け毛が多いです」
目が覚めたら長い髪が枕元にごっそり落ちている。髪が長い女性の場合、それを目にするのが精神的につらいため、治療の前にショートヘアや坊主にする人が多い。
◆ウィッグを使うのは半年から1年
でも、脱毛は一時的なもの。「治療が終わればまた生えてくるので、安心して治療を受けたほうがいい」と野澤さんはアドバイスしている。
「脱毛時に良いというシャンプーや育毛剤が売られていますが、医学的にはその効果は認められていません。怪しいものも多いので、手を出さないほうがいいでしょう。全く髪がない時期は短く、治療が終われば1か月くらいで徐々に生えてきます。髪が伸びそろうまでは、ほとんどの人がウィッグを使います。治療期間を含めて、半年から1年間被っている人が多いです」
野澤さんらが行った調査結果によると、患者は痛みや吐き気といった身体症状よりも、頭皮やまゆ、まつげの脱毛やむくみといった外見の変化のほうを苦痛に感じているという。
特に女性のほうがその傾向が強く、乳がんの患者の回答は「乳房の切除」より「脱毛」が最も苦痛だと感じる人が多かった。
それは、“髪がなくなったこと自体”がつらいのではなく、「外見が社会とのかかわりに大きく影響しているから」だという。