山口組分裂騒動は、異様な警戒と緊張感のなか年を越した。2016年、どちらの側からいつどのように仕掛けるのか。それとも、抗争せずに収束する、ヤクザの「禁じ手」があり得るのか。ともに暴力団の事情に精通する、ノンフィクション作家・溝口敦氏とフリーライター・鈴木智彦氏が対談した。
溝口:抗争が起きるとしたら、今年ですよ。
鈴木:やっぱり今年ですか。
溝口:いま、直参の数や組員数でいうと、六代目と神戸で7対3くらいですが、神戸側が数を増やしていて、今年は5対5に近づいていくのではないか。そうなると、六代目側は本家であることさえ疑われてしまう。抗争せざるを得なくなるのではないか。
ただし、抗争という形になると、組長の使用者責任が問われたり、組織的殺人でトップが捕まるから、抗争に見せないようなやり方しかない。半グレ集団を装って、金属バットや包丁、角材、ビール瓶などを使ったり。
鈴木:市販の凶器。
溝口:2013年に起きた「餃子の王将」社長の殺害事件で最近、九州の暴力団幹部のタバコの吸い殻が現場近くに落ちていたことが公表されましたが、絶対に捕まらない必殺の体制が整えば、やるかもしれない。弘道会(司忍組長の出身母体)には、もともと十仁会というヒットマンの秘密部隊があって、今はもうないとされているが、10日もあれば復活できる力はある。
鈴木:もともと武闘派でのし上がってきた組織ですからね。弘道会は、配下に「動くな」って言ってるんですよね、たぶん。ただ、六代目側は神戸側を放置していたら、求心力がどんどん落ちていく。もし今年一年、このままだったら、山口組のバリューが揺らぎます。