放送作家でコラムニストの山田美保子氏が独自の視点で最新芸能ニュースを深掘りする連載「芸能耳年増」。今回は、テレビ業界の番組打ち上げ事情を解説。
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経費削減の折、昔のように派手な打ち上げを行う番組は「もうない」と言っていい。予算だけではない。視聴者のテレビ離れが急速に進むなか、「視聴率が大してとれていないのに、派手なことをやるわけにはいくまい」「恥ずかしい」と自粛する番組責任者の声も聴かれる。
それでもまだドラマ班からは華やかな打ち上げの様子が漏れ聞こえてくる。大手プロダクションに所属する俳優たちへの局側の気遣いから豪華な会場に。そしてプロダクション側からも競うように豪華景品が用意されることも昔とあまり変わらない。
だが、情報番組やバラエティ番組のそれは、本当に地味になっている。発泡酒と紙皿に載った乾き物で「スタジオの前室で」とか「局内のカフェや食堂で」というケースだらけだ。
とはいえ、スタッフや出演者が集まって交流を深めるのは番組作りにとって重要なこと。私が担当する某番組は、年に一度、制作スタッフ全員がMCを囲む食事会があるが、その際は、あえて、ふだんMCと話すことのないADさんたちの席をメインテーブルに置き、短い間ではあるがMCと交流をもってもらうようにプロデューサーが配慮している。
こうした、ちょっとしたことでスタッフの士気が上がることは間違いないし、放送作家として私には「演者やスタッフが仲のいい番組はジワジワと視聴率が上がっていく」という持論があることも度々書いている。
演者やスタッフに「独裁者」と呼ばれるような人がいて、みんながみんな、その人の顔色をうかがうばかりで何も言えないような、風通しが悪く、しかも打ち上げもないような番組は、いずれ廃れていく…。そんなケースを何度も見てきている。
実は昨年末、初めて『情報ライブ ミヤネ屋』の打ち上げに参加させてもらった。
同番組は大阪読売テレビ制作。コメンテーターの大半は東京から通っているので、打ち上げのときは、その日出演していた人が残ったり、たまたま大阪で仕事があったついでに立ちよるのが常。私は初めて年内最後のオンエア日のコメンテーターだったのだ。
番組終了30分後から、同局内のカフェに月~金のスタッフがほぼ全員集合。同局のエライさんも集まるなか、司会進行をつとめたのは、番組に関わって日が浅い男性スタッフだった。
関西の番組らしく、串揚げや粉もんが並ぶなか、打ち上げのメインは、番組でもおなじみの特製巨大ボードを使った“スタッフの素顔”だった。
ここを仕切ったのが番組MCの宮根誠司さん。それまで飲んだり食べたりしていた参加者は昔の街頭テレビに群がる人々のように、全員がボードに注目。ADさんたちは体育座りでフロアに整列し、宮根さんの絶妙な進行を見守った。
餅は餅屋で、番組の打ち上げには、この日のために担当者が編集したVTRが流れるものだが、『ミヤネ屋』では、新たに加わった曜日プロデューサーの隠し撮りをしたり、家族のインタビューを撮ったり。さらには、スタッフにアンケートを取ったり、東京に異動した元スタッフにもメッセージを貰いにいったり…と、それはそれは凝った内容。