国際情報

南京大虐殺 世界記憶遺産登録で世界の教科書に掲載可能性も

2015年12月「南京大虐殺記念館」(南京市)で開催された追悼式典

 ユネスコ世界記憶遺産に「南京大虐殺関連史料」が登録されたことで、日本はどのような影響を受けるのか。これから何が起こるのか。

 中国は「アンネの日記」の世界記憶遺産登録が国際的に注目された2009年から「南京大虐殺関連史料」を登録申請する準備を始め、2014年3月末までにユネスコに申請したとされる。

 この申請で登録された史料は、日本軍の蛮行を示す写真、米国人牧師が撮影したフィルム、南京市で働いていた中国人女性の日記など11点。いずれも「戦時プロパガンダであり、歴史史料として信憑性に欠ける」(明星大学・高橋史朗教授)というシロモノだが、中国の周到な準備と日本の対応の遅れにより、2015年10月、「南京大虐殺関連史料」はユネスコの世界記憶遺産に登録された。

 既にユネスコ公式HPの世界記憶遺産の項目には『Documents of Nanjing Massacre』(南京大虐殺文書)の名目で中国の申請書が掲載され、「少なくとも30万人の中国人が殺された」、「2万人の女性が日本軍によって強姦、輪姦された」との中国側の一方的な主張が展開されている。今後、ユネスコのHPにアクセスした世界中の人々が、中国側の主張を「歴史的事実」と受け取る可能性があるのだ。

 ユネスコという“お墨つき”を得た中国がこの先、南京大虐殺を「日本叩き」の有効なカードとして、内外で政治的に利用することは疑いない。

 2015年12月13日、江蘇省南京市の「南京大虐殺記念館」で開催された国家追悼式典で李建国・全人代副委員長は「(記憶遺産登録で南京大虐殺が)歴史の教訓となり、世界の人々に警鐘を鳴らした」とアピール。さらに中国の档案館(公文書館)は「南京大虐殺関連史料」をデータベース化し、全世界に公開する予定だ。档案館の関係者は、「侵略戦争が生んだ人類の大災害を全人類が正しく理解・研究することを願う」と述べている。

 日本政府は、論争が続く歴史問題を軽々に登録したことに抗議し、ユネスコ拠出金(分担金を合わせた日本の2014年度の負担額は約42億円)の支払い停止をチラつかせたが、中国外交部の華春瑩・副報道局長は「日本側が公然とユネスコを脅迫していることに驚いている」と対抗。

 さらに英・ガーディアン紙をはじめ複数の欧米メディアが「日本がユネスコへの支出を停止すると脅迫」との見出しを掲げるなど、日本の姿勢を批判的に報じた。中国の巧みな策略により、「日本は歴史を認めない悪質な国」とのレッテルを貼られているのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

タイと国境を接し、特殊詐欺の拠点があるとされるカンボジア北西部ポイペト。カンボジア、ミャンマー、タイ国境地帯に特殊詐欺の拠点が複数、あるとみられている(時事通信フォト)
《カンボジアで拘束》特殊詐欺Gの首謀者「関東連合元メンバー」が実質オーナーを務めていた日本食レストランの実態「詐欺Gのスタッフ向けの弁当販売で経営…」の証言
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《ベイビーが誕生した大谷翔平・真美子さんの“癒しの場所”が…》ハワイの25億円リゾート別荘が早くも“観光地化”する危機
NEWSポストセブン
まさか自分が特殊詐欺電話に騙されることになるとは(イメージ)
《劇場型の特殊詐欺で深刻な風評被害》実在の団体名を騙り「逮捕を50万円で救済」する手口 団体は「勝手に詐欺に名前を使われて」解散に追い込まれる
NEWSポストセブン
戸郷翔征の不調の原因は?(時事通信フォト)
巨人・戸郷翔征がまさかの二軍落ち、大乱調の原因はどこにあるのか?「大瀬良式カットボール習得」「投球テンポの変化」の影響を指摘する声も
週刊ポスト
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
沢尻エリカ、安達祐実、鈴木保奈美、そして広末涼子…いろいろなことがあっても、なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
女性セブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
《電動キックボード普及でルール違反が横行》都内の路線バス運転手が”加害者となる恐怖”を告白「渋滞をすり抜け、”バスに当て逃げ”なんて日常的に起きている」
NEWSポストセブン
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン