久しぶりに格闘技の話題で盛り上がった2015年の大晦日だが、曙vsボブ・サップの再戦で注目されていた「RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2015」を放送したフジテレビは視聴率7.3%と全放送局で最下位に終わった。しかし、RIZINでは総合格闘技の新たな歴史の始まりを感じさせる場面もみられた。2試合と試合数は少なかったが「女子」の総合格闘技が本格的に始まった分岐点として、のちのち語られる日となりそうなのだ。
女子格闘技にくわしいフリーライターの藤村幸代さんは、RIZIN3日目、31日の第1試合でRENAが入場したときの会場の雰囲気に驚いた。
「女子の格闘技を長年みてきましたが、かつては女子の試合が始まると飲み物を買ったりトイレに行く人もいたりして、試合中も『女だからつまらない』とする雰囲気もあった気がします。でも今回は違った。観客が女子の試合を目玉カードとして期待しているのがわかったし、RENAも飛びついて腕十字固めをきめて鮮やかに勝利し会場を沸かせてくれました。24歳のRENAが、日本の女子総合格闘技を背負っていくのだと誰からもわかる試合でした」
キックボクシングに投げ技や関節技が加わるシュートボクシング選手のRENAは、RIZINでのイリアーナ・ヴァレンティーノ戦が初めての総合格闘技公式戦。RENAの身長は160センチでルックスは愛らしく華やか、試合は51㎏級契約だから曙とボブ・サップのような大きさによる驚きはない。それでも、格闘技を見慣れているであろう観客を満足させる充実した試合をみせた。
もう1試合の女子の試合は、ブラジルのギャビ・ガルシア対ドイツのレイディー・タパ。186センチと180センチの存在感は圧倒的で、とくにガルシアの筋肉隆々とした姿には感嘆のため息を漏らすほかなかった。打撃戦になったが、体格に勝る世界柔術王者のガルシアがバックブローでTKO勝ちし、次に始まったボブ・サップ対曙より満足度では上回ったのではないかと囁かれた。
大晦日に開催される格闘技の大会は、他の日時に開かれるものとは違う特別なものだと主催者も出場者も、そして観客も感じている。長期休暇の季節なので来場し観戦する人が多く、かつては地上波のテレビ放送によってお茶の間に届きマニア以外の人にも試合を見てもらえたチャンスの日だからだ。その場所に女子選手が初めて登場したのは、2003年12月31日の「INOKI BOM-BA-YE 2003」での辻結花対カリオピ・ゲイツィドウ戦だった。