完全自動運転は「レベル4」だが、それについてはまだ有人か無人かも定義していない。技術と議論の成熟を待って決めましょう、という状態だ。
正直、レベル4の可能性はまだ考えても仕方ない。政府は2020年代後半の実用化を想定しているが、その前に国際的な基準作りと、法的な問題をクリアしなければならない。
例えば現時点では、自動運転車はスピード違反ができない。大半のクルマがスピード違反で走っているのが現実だから、それとどう整合性を取るかだけでもかなりの難問だ。
そして最大のハードルは、「この世に絶対はない」ということだろう。絶対に自動運転車が事故を起こさないと言い切ることはできない。その場合、誰が責任を取るのか? 「やっちゃえ日産!」のゴーン社長なのか?
レベル4は、自動運転の安全性が限りなく100%に近づいた上で、それでももし何かあったら誰かが責任を取るという法整備が成されてからだ。私見だがゴーン社長のムショ入りは現実的ではないので、責任はやはり乗っている誰かが取ることになろう。そのあたりがキッチリ決まらないと、レベル4は見えない。
ただしその頃には、動体視力の衰えた我々のヘッポコ運転より、自動運転の方が数百倍安全になっていて、我らオッサンは喜んで「万が一の場合は責任取りますボタン」を押し、自動運転をオンにするのだろう。助手席の美女もそれを望むはずだ。
「えっ、自分で運転するのォ? こわ~い。ここで降ろして!」
そんな時代はそう遠くない。
※週刊ポスト2016年1月15・22日号