昨年、杜撰な基礎工事がきっかけでマンションの“傾斜”が発覚した「パークシティLaLa横浜」。
今後、建て替えするのか補修にとどめるのか、同マンションの行く末はいまだに決まっていないが、昨年11月に管理組合が住民(区分所有者)を対象に行ったアンケートでは、建て替え希望者は67%ほどで、建て替え決議に必要な5分の4の賛成は得られていない。
こうした事態を考慮してか、国土交通省はマンションの建て替え要件を変更する方針を決め、所有者の5分の4以上から3分の2以上の合意に緩めたい意向だ。
もし実現すれば、パークシティLaLa横浜のような欠陥マンションのみならず、老朽化したアパートや団地住民の建て替え機運は高まっていくだろう。
国交省によれば、昭和56年以前の耐震基準で建てられた大型マンションや団地は全国に約1500か所あるものの、実際に建て替えが行われたのは、わずか110か所あまりだという。建て替えが進まないのは、〈住民の一斉退去→仮住まい→マンション建て替え→再入居〉と多大な手間や労力がかかるうえ、それに伴う住民の費用負担が発生する恐れがあるためだ。
住宅ジャーナリストの山下和之氏がいう。
「老朽マンションの多くが分譲から40年、50年が経過して所有者・入居者の大半が高齢化しています。たとえ費用負担が発生しなくても、『ここで最期を迎えたい』『仮住まいなど苦労をしたくない』という人がいて、総戸数の多いマンションほど、そうした人たちを説得するのはなかなか大変です」
しかし、建物の容積率(敷地面積に対する建物の比率)に余裕がある建物ならば、余剰床で戸数を増やして売り出すことで、従来の区分所有者が新たな金銭負担をせずに建て替えることが可能だ。山下氏が続ける。
「特に都市再生緊急整備地域に指定されれば、容積率、建ぺい率などが大幅に緩和され、高い建物が可能になり、余剰床の売却により所有者のほとんどが負担金なしで建て替えられるようになります。
しかも、空いた土地に高齢者向け施設、保育所、商業施設などが入居すれば、エリアの活性化にもつながります」
費用負担ゼロの建て替えは、建物の安全が守られるばかりか資産価値の高まりも期待できる。山下氏によると、将来の建て替えを考えた場合、小規模マンションで比較的富裕層が取得する都心近くの高額マンションのほうが、コンセンサスを得やすくなる可能性が高いという。