世界が直面しているテロとの闘いは、泥沼の様相を呈している。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、現在最も脅威をもたらしている過激派組織IS(イスラム国)の勢いを止めるための3つの遮断方法を提案する。
* * *
テロリストは空爆や地上戦をかいくぐって生き延び、世界各地に散っていくことは、これまでの歴史を見ればわかることだ。ベトナム戦争でアメリカ軍はベトコンに勝てなかった。ソ連・アフガン戦争ではソ連軍は殉教を辞さないジハード戦士に勝てなかった。彼らは死を恐れないために、形をかえて地下にもぐり込み、戦いで世界を混乱させようとする。
空爆という暴力は最小限にとどめながら、ISの勢いを止めるには、3つの遮断が必要だ。
第一は、人の流れ。インターネットなどで洗脳された若者たちを、シリアに入れないことだ。ヨルダンの国境沿いは厳しいが、トルコの国境は甘く、ここからヨーロッパの若者が吸い込まれるようにシリアに入っていく。ここを厳重に管理する必要がある。
第二は、お金の流れを止めること。湾岸のスンニ派の超富裕層の資金が、シーア派のイランやアサドを抑えるという目的のため、ISに流れている。資金の流れを止めるため、1か月で約50億円の利益を生むという油田や製油所、タンクローリーなどを空爆するのは意味があると思う。
第三は、武器がシリアに入らないようにすること。アメリカは武器をIS以外の反アサド勢力に提供するといっているが、とんでもないことである。今までもアメリカが渡した武器は、ISに流れている。
これらを遮断しながら、ISなるものが再び生まれないよう、雇用が広がるような支援、人を育てる教育、そして、傷ついた人を救う医療支援が必要だと考える。