4回目の核実験を強行したため、国連主導で経済制裁を強化される見込みの北朝鮮。これまで北朝鮮といえば、国家が人民統治と軍拡に突き進むあまり財政的に困窮し、一般庶民の暮らしは「飢えとの闘い」というイメージが強かった。
ところが、最近では“赤い資本家”、「ドンジュ(金主)」と呼ばれ、私財5万ドル(約620万円)を保有する新興富裕層が約6万人にまで増えているといわれる。各方面から報じられるドンジュの豪勢な生活ぶりは、にわかに信じがたい。
平壌を中心とした繁華街には、多くの高層ビルやマンションが建ち並び、人々はスマホを片手にマイカーに乗り、高級百貨店やスーパーに向かう。そこで外国の輸入食品やブランド品、家電などを買い漁り、帰りにはレストランや24時間営業のコーヒーショップでくつろぐ――。この光景だけ見れば、北朝鮮経済は好転しているかのように映る。
確かに、2011年に金正恩第一書記が政権を継承して以降、北朝鮮経済は少しずつ上向いている。韓国銀行の調べによれば、北朝鮮のGDP実質成長率は2011年より4年連続でプラス成長を続けている。
「金正恩は人民の離反を恐れて生活向上を掲げ、一定の市場原理を認める経済政策に舵を切った。その結果、政府公認の『闇市場(チャンマダン)』や民間で金融・不動産業を営む人たちが現れ、そうした資本家から資金を“上納”させる仕組みもできあがってきた」(全国紙記者)
『コリア・レポート』編集長の辺真一氏も、富裕層増加の背景を語る。
「これまで北朝鮮は表向き、国家予算の10%あまりを国防費に回していると言われてきましたが、実際は30~50%の資金をつぎ込んできたのは紛れもない事実。そして、核やミサイルなど大量破壊兵器を保有するに至り、水爆まで手にしたと宣言しています。
ここまでくると、もはや通常兵器に予算をかけなくても済む状況で、金正恩は国家予算の一部を民生部門に回し始めています。これが経済成長を促す契機になっているという見方はできます」