欧米諸国で「イスラム国」打倒の協力体制が整ったと思った矢先に事件は起きた。ロシア軍機のシリア領内での墜落。プーチン大統領はトルコ軍の関与を明言し、ロシア・トルコ関係は一触即発の状態にある。2016年の国際情勢の鍵を握るのは間違いなくプーチン大統領である。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏がその次なる行動を示唆した。
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プーチン大統領は、エルドアン政権を徹底的に揺さぶるつもりだ。そこでロシアが重視しているのがイスラエル・カードだ。2015年12月11日、プーチン大統領は、モスクワで国防省幹部を招集し、演説を行った。
〈プーチン氏は「重要なことは、テロリスト排除を本当に望む国々との協力を進めることだ。それにはイスラエル空軍の拠点や米国が率いる有志連合との情報交換も含まれる」と述べ、かつては「国際法違反」だとして批判していた有志連合による空爆との協力関係を進める姿勢を鮮明にした。/トルコによるロシア軍機撃墜については直接言及しなかったが、「我が軍に対するいかなる挑発行為も未然に防がねばならない」と強調。「ロシア軍部隊を脅かすような標的は、直ちにすべて全滅させることを、特に厳しく命じる」と述べた。〉(2015年12月11日「朝日新聞デジタル」)
ロシア軍はこれまでも米軍とは、軍用機の偶発的な衝突が起きないように連絡を取り合っていた。トルコは有志連合にも参加している。
プーチン大統領は、トルコとの対立を米国を含む他の有志連合にまで拡大することはないという姿勢を鮮明にした。その上でイスラエル空軍との協力についてプーチン大統領が言及したことには大きな意味がある。