昨年末の外相会談によって、日韓関係は急激に変化する時期を迎えつつある。経営コンサルタントの大前研一氏は、韓国経済の苦悩は「中進国のジレンマ」から抜け出せずにいることだと指摘している。なぜ抜け出せないのか、今後、脱出できる見込みはあるのかについて大前氏が解説する。
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日韓慰安婦問題が昨年末の外相会談で「最終的かつ不可逆的に解決」されることで合意し、戦後最悪と言われていた日韓関係に雪解けの兆しが見えてきたという。だが、慰安婦問題はソウルの日本大使館前に設置された慰安婦像の撤去を含めて完全解決からは程遠く、竹島問題も打開のメドは全く立っていない。2016年、日本は韓国と、どう向き合うべきなのか。
韓国の朴槿恵大統領は、日本に対しては2013年の「3.1節」(抗日運動記念日)の演説で「加害者と被害者という立場は1000年過ぎても変わらない」と「恨み1000年論」を展開したが、アメリカに対しては礼賛と憧憬、中国に対しては従属と服従、できれば利用という態度である。そのくせ実際には日本を最も利用している。韓国の工業製品の大半は日本の部品や機械を買ってきて組み立てているだけなのだ。
その一方で、韓国経済は未だに「中進国のジレンマ」から抜け出せないでいる。現在、韓国の国民1人あたりGDPは約2万5000ドルだ。一般的に国民1人あたりGDPが1万ドルを超えると途上国から新興国になり、2万ドルを超えると中進国、3万ドルを超えると先進国とされる。
だが、3万ドル経済に向かおうとする中進国は、しばしば為替や労働コストが高くなって競争力を失い、3万ドルに近づくと落ちるという動きを繰り返す。これが「中進国のジレンマ」だ。韓国経済も、調子が良くなるとウォンや労働コストが高くなり、そのたびに競争力を失って落ちるという状況に長く陥っている。