1月6日に強行された北朝鮮の「水爆実験」を契機に、韓国では急速に核武装論が高まっている。北への脅威だけが理由ではない。根底にあるのは、「核保有国こそが一流国」であるという国家観だ。
「金正恩よ、核実験は同じ民族に対する裏切り行為だ」
北朝鮮の“水爆実験”の対抗措置として、1月8日、韓国軍は軍事境界線近くで拡声器による宣伝放送を4か月ぶりに再開した。同日は北朝鮮の金正恩・第一書記の誕生日。あえてその日に金正恩を呼び捨てにする放送を再開したことに北朝鮮側は激怒し、「韓国側は情勢を戦争直前に追い込んでいる」と金己男・朝鮮労働党書記が激しく非難した。
「今回の実験が4回目ということもあり、韓国国防省は“北の核はかなり小型化が進んでいる”と判断しています。緊張がピークに達したのは、米軍が核弾頭も搭載できる戦略爆撃機B52を北朝鮮国境から約70キロにあるソウル南郊の烏山空軍基地に派遣した10日だった。38度線を挟んで、南北の軍隊が睨み合う一触即発の状態が現在も続いている」(在韓ジャーナリスト)
韓国がここまで過敏に反応するとは、北朝鮮にとって想定外だったかもしれない。そもそも核実験を指示した金正恩には、韓国のことなど全く頭になかっただろう。北朝鮮問題に詳しい静岡県立大学教授の伊豆見元(いずみ・はじめ)氏が話す。
「核実験を強行すれば国際社会から孤立することなどは端から織り込み済み。それよりも金正恩は、今年5月に36年ぶりに開かれる朝鮮労働党大会で、現在の国内における窮状の責任を制裁に前向きなアメリカや韓国、日本など他国のせいにできるメリットを選んだ。国民の危機感を煽って体制への求心力を高める目的です」