日本の安全保障は米国依存で、日本人の持つ伝統的な価値観が失われている──との指摘は多い。だが、漫画家の小林よしのり氏は、「日本独自の道義やバランス感覚といった不文律は残っている。この不文律を守るのが本当の保守だと思っている」と話す。
新刊『大東亜論第二部』で日本人の精神性の復興を説く小林氏が、国際政治学者・三浦瑠麗氏と「新時代の安全保障」を語り合った。
三浦:保守派がアメリカに依存する背景には、中国に対する恐怖があります。ただ一般の国民は米国を意外に冷静に見ています。日経新聞の世論調査では、中国が台頭する中で日米同盟に不安を感じない国民は2割以下に過ぎません。
いまアメリカはイラク戦争とアフガン戦争の後遺症で、国際紛争の現場から距離を置きはじめています。尖閣で何か起きてもアメリカは守ってくれません。自国の民意に反してまで、大国である中国と軍事対決はできないのです。
小林:わしはアメリカを突き放す方法を考えているんだけど、三浦さんはアメリカが逃げていくと見ているんだね。
わしも巷で語られている中国脅威論には疑問がある。いざ戦争が起きたとき人民解放軍がどこまで戦えるのか。日清戦争のときのようにクモの子を散らすように逃げ出してもおかしくない。
三浦:私は中国恐怖症を数字で語るから本質が見えなくなっていると思うんですよ。保守派は中国のGDPが日本の2倍に、軍事費が3倍になったから危険だという。
けれど、何をしてくるか読めないことが中国の本当の脅威なんです。自らの原理原則を持たずに対処すると、日本自身が中国のような国になってしまう危険性がある。
小林:覇道には覇道をと考えたら、中国人になります。
三浦:だから中国が脅威だと煽りすぎることは逆効果なのではないかと思います。