ライフ

古くから信仰集める出羽三山 今も修験者や参拝者が来訪

出羽三山の入り口である羽黒山の国宝・五重塔

「西の伊勢参り」と「東の奥(出羽三山)参り」──。江戸時代、人は一生に一度、三重・伊勢神宮と山形・出羽三山を訪れることが重要な人生儀礼とされた。なぜなら、そこは祖先の霊魂や自然の神々が鎮まる山として古くから信仰を集める修験道の霊山だったからだ。生と死と再生の地・出羽三山。その神秘の聖域を、写真家・小澤忠恭氏が案内する。

 * * *
 出羽三山は、山形県庄内平野を縁取る月山、湯殿山、羽黒山の総称である。古代狩猟採集時代から、山々の自然物には神が宿るとされた自然神信仰の場だった。のちに仏教が伝わり、国家中央の意思が都から遠く離れたこの地に及ぶと、人々はこれを受け入れ、出羽三山は神と仏を一体の存在とする神仏習合の聖地となった。

 だが、明治新政府は国の近代化とアイデンティティの確立のため、各地で多様な形で成立していた自然神信仰を統合し、国家神道を国教とした。その結果、自然神と融合していた仏教を分離する(=神仏分離)。出羽三山にもその波は押し寄せ、国家神道への改宗を迫られた。しかし、庶民の山への信仰が消えることはなかった。人々は押し付けられた教義よりも自然神を畏敬する。これは今も日本人の持つ特性なのだ。

 古来、羽黒山で現生の幸せを、月山で死後の極楽浄土を、湯殿山で生まれ変わりを人々は願ってきた。月山や羽黒山の山頂には素晴らしい絶景が広がる。しかし、その本当の秘めたる聖地は各山の深い谷、行者たちが分け入ってきた世界にあった。開山から1400年余り。山には今も多くの修験者や参拝者が訪れる。

撮影・文■小澤忠恭(写真家)

※週刊ポスト2016年1月29日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン