ビジネスの世界では、メーカーと小売店が価格を巡って激しい攻防を繰り広げることは決して珍しくない。しかし、高度経済成長期の真っ只中に大ゲンカを繰り広げたのが、松下電器を率いる松下幸之助氏と、ダイエーの中興の祖・中内功氏だ。それは当時の発言にも表れている。
松下幸之助 「適正な利益をあげ、それを国家、社会に還元することが、企業にとっての 社会的な義務である」
中内功 「ダイエーの存在価値は、 既存の価格を破壊するところにある」【出典:松下幸之助著『実践経営哲学/経営のコツここなると気づいた価値は百万両』(PHPビジネス新書)、中内功著『わが安売り哲学』(千倉書房)】
1964年、テレビの値引き販売に端を発しダイエーと松下電器(現パナソニック)が決裂。商品出荷停止、裁判所への告訴など、「流通革命の旗手」と「経営の神様」は決して歩み寄らなかった。1969年、中内は経済誌のインタビューでも「松下幸之助は古い」などと批判している。1989年、松下幸之助の葬儀の際に意を翻し取引再開を求めるも、松下側はこれを拒否。両社の和解は1994年まで待つことになる。
※SAPIO2016年2月号