「身近なデータからみて、直近の日本経済は明るい」というのは、内閣府の「景気ウォッチャー調査研究会」委員など主要な景気調査の委員を歴任し「景気のジンクス」を読み解くスペシャリストとして知られる、三井住友アセットマネジメント理事・チーフエコノミストの宅森昭吉氏だ。2015年には「23年ぶり」「18年ぶり」というデータが続出したが、これが意味することは何か、宅森氏が解説する。
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身近な事象からみた直近の日本経済は、かなり底堅く明るいという印象を持っている。というのも、さまざまな分野で「23年ぶり」「18年ぶり」というデータが続出しているからだ。
このふたつの数字が意味するのは、不況期からの脱却である。まず23年前は、バブル崩壊直後の1992年だ。景気のピークは前年の1991年であり、その翌年から「平成不況」が本格化している。
そして18年前というのは1997年、アジア通貨危機の年だ。日本でも北海道拓殖銀行や山一證券が破綻する金融危機となり企業の連鎖倒産も相次いだほか、翌年の急激な円高や、長銀、日債銀の破綻につながる長く本格的な不況のスタートとなった。
2015年には、日本経済の転換点となったこれらの年以来の水準に回復したことを示すデータが、数多く出現している。
たとえば、日経平均株価は2015年9月9日に前日比7.7%となる1343.43円上昇した。1日の値上がり幅としては1992年4月の1252.51円を抜き史上6番目の記録である。さらに、9月の日銀短観で景況感を示す大企業業況判断DIは、非製造業でプラス25と4四半期連続で改善した。この数値は23年ぶりとなる。
雇用情勢を見ると、3か月連続の改善となった4月の完全失業率は3.3%と、1997年4月以来18年ぶりの低水準を示した。有効求人倍率も1.17倍と1992年3月以来23年ぶりの高水準となり、9月にこの記録をさらに更新している。
雇用の限界的なデータといえる自殺者の数にも、同じ傾向がみてとれる。2015年の月次の自殺者数はすべて前年を下回っており、このペースなら1997年以来となる2万5000人割れは確実だ。1997年以前の自殺者数は10年以上2万前半台が続いていたが、1998年に3万人を超え、長く高止まりしていた。2015年になってようやく自殺者数が金融危機前のレベルに戻ったと考えられる。