新作大河はどうやら順調に船出した様子である。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。
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2回目で視聴率20%を超え、絶好スタートのNHK大河ドラマ『真田丸』(日曜午後8時)。20%超えは3年ぶりとあって、制作陣も祝福ムード。と聞くとこれまで無関心だった層の中にも、「とりあえずチャンネルをあわせてみようかな」という流れが出てくるはず。
さて、これから見続ける人が増えるのか、それとも……? スタートダッシュで「気になった3つの点」をあげてみたい。
●その1 もろ手をあげて絶賛したい点
男優たちの力がドラマの牽引力そのものになっている。筆頭は、主役をさしおいてまず、出色の出来の平岳大。武田家当主を継いだ信玄の息子・勝頼を演じ、鮮烈な印象を残した。
偉大な父・信玄に対する息子としての苦悩。裏切られ追いつめられて自刃するシーンは、ピンと張りつめた緊張感に一瞬たりとも目が離せなかった。
その静かなたたずまい。横顔に優しさ強さともろさ、悲哀、葛藤と苦しみ、といったものが交差し凝縮されていた。たった2回で姿を消してしまった展開に「平ロス」の声が飛び交うほど。
もう一人。目が惹きつけられてしまうのが、真田信繁(幸村)の父・昌幸演じる草刈正雄だ。
戦国武将の危機感と飄々とした個性的キャラをあわせた「食えぬやつ」の存在感が、ぐんと際立つ。ここまで「見たくなる」草刈正雄、失礼ながら初めてだ。やはり二枚目役者だけでは終わらなかった。
主役・真田信繁を演じる堺雅人は、徹底してとぼけた存在を演じぬく力量がある。そうである以上、兄役・大泉洋は、いつものおちゃらけを封印。大泉が真面目さをきちんと持続できれば、兄弟のバランスは保てる。そこも見所だ。
●その2 残念な点
男優陣の絶妙な演技と配役のバランスを、残念ながら思い切りぶち壊しているのが女優陣。その筆頭が、信繁の母を演じる高畑淳子。
妙に裏返った声色でおどけた演技。大げさにまくしたてるあたり、勘違い。まさか、いい年した女優が目立ちたい願望で空回り? ありえない。
姉役の木村佳乃も残念。「でしょ?」「ねえ~」と現代口語調セリフを貫く、こちらも三谷ワールドの尖兵役。
そうした女優陣の一見「コミカル」な演技は、残念ながらドラマを壊す方向で作用している。役者も演出のねらいそのものも、滑っている。そもそも小手先で笑わせようというこざかしい演出は、大河ドラマにはいらないのでは。
有働由美子アナのナレーションも、本人キャラが目立ちすぎ。入り組んだ歴史背景を解説するナレーションは、一歩引いて自分の存在感を薄め低音に抑えるくらいでちょうどいい。もちろんそんなことはプロとしてわかりきっているだろうけれど。張り上げる声を聞くたびに顔が浮かんでしまうのは、本人の意図はいざ知らず、マイナス。
つまり、脚本家・三谷幸喜の歴史へのこだわりと遊び心の良い部分が主に男優陣に現れていて、ウケ狙いすぎの難点の方が今のところ女優陣に出ているのでは。