昨年12月に交わされた、いわゆる「従軍慰安婦」問題に関する日韓合意。慰安婦支援の財団に日本政府が10億円を拠出し、安倍首相が元慰安婦に「心からお詫びと反省の気持ち」を表明することで、問題の「最終的かつ不可逆的」な解決とするはずだったが、案の定、韓国政府がぶれ始めた。
当初の懸念通り、日本政府が10億円拠出の条件として要求していたソウル日本大使館前に建つ「従軍慰安婦の銅像」の撤去は一向に実行されないまま。韓国政府は「銅像は民間団体が建てたもので、政府による強制撤去は困難」と難色を示しており、「やはり朴槿恵大統領は信用できない」と日本側を失望させている。
そんななか、朴槿恵政権を“第二の銅像”問題が襲うという事態が発生し、「政権の進退にまで影響しかねない状況だ」(韓国人ジャーナリスト)という。
問題の“第二の銅像”とは、「ベトナムピエタの像」と呼ばれるもの。日本語にすると「ベトナムの母と子供の像」といった意味だ。現在、ベトナム人の母子をかたどった銅像が韓国人の彫刻家によって作られており、それが今年中に韓国とベトナムの両国に設置される予定なのだという。
韓国においてなぜベトナム人の銅像が問題になるのか。突然にはピンとこない話だが、その疑問を解くカギはベトナム戦争(1960~1975年)にある。
韓国は当時、北朝鮮と対峙する“分断国家”として反共産主義を国是に掲げていた関係から、ベトナム戦争を戦うアメリカを積極的に支持。1964年から終戦まで、延べ32万人もの兵士をベトナムに送り込んだ。だが、韓国軍はベトナムで多くの民間人虐殺やレイプ事件を引き起こし、韓国現代史最大の汚点とされている。